
3分でわかる!この記事の要点
- 結論
- 孤独を感じている大人が自然の中で過ごす取り組みをすると、孤独感が1年後まで下がっていました
- 理由
- スペインの320人の試験で、孤独感が3か月後に約11%、1年後に約17%下がっていました
- アクション
- 公園や庭、水辺へ。自然の中で過ごす時間をつくり、つらいときは誰かを誘ってみましょう
目次[閉じる]
「孤独」は、ひとりでいることとは違う
「孤独」と聞くと、ひとりぼっちでいる様子を思い浮かべるかもしれません。けれど研究者たちは、孤独を「人とのつながりについて、こうありたいという思いと、実際とのずれ」から生まれる気持ちだと説明しています。人がたくさんいる部屋の中にいても、孤独を感じることはあるのです。
米国では約3人に1人、世界では約6人に1人が、日常的に孤独を感じているといわれています。
そんな孤独を和らげる方法として、いま注目されているのが「自然の中で過ごすこと」です。スペインのバルセロナ・グローバルヘルス研究所(ISGlobal)や米国コロラド大学ボルダー校などが参加する国際研究プロジェクト「RECETAS(レセタス)」は、孤独を感じている大人320人を対象にした試験を行い、2026年8月、医学誌『The Lancet Regional Health – Europe』に結果を発表しました。
「自然」を処方するという考え方
この研究の背景にあるのが「社会的処方」という考え方です。医師などが、薬の代わりに地域の活動やつながりを「処方」して、健康や暮らしを支えるというものです。
なかでも、園芸、ハイキング、野鳥観察といった自然の中での活動をすすめるのが「自然を使った社会的処方」です。研究チームのジル・リット教授(コロラド大学ボルダー校)は、これまでこの方法には期待が大きい一方で、確かな根拠が少なかったと話しています。今回の試験は、その根拠を確かめるために行われました。
どんな研究?
参加者
- 対象
- バルセロナ都市圏の、経済的に厳しい12の地区に住む、孤独を感じている18歳以上の大人320人
- 年齢・性別
- 年齢の中央値は約63歳、約8割が女性
2つの方法を比べた
参加者は、くじ引きのような方法で2つのグループに分けられました。
- 1. 仲間と一緒に自然の中へ(「フレンズ・イン・ネイチャー」)
- 8〜10人のグループで、週に1回2時間、9週間続けました。2人の進行役がつき、公園や庭、川沿い、海辺、歴史ある場所などに出かけます。園芸、野鳥観察、自然をテーマにしたアートなどを楽しみながら、仲間どうしで支え合う時間を過ごしました。
- 2. 自分のペースで自然の中へ
- 30分ほどの面談で気持ちを後押ししてもらい、近所で参加できる自然の中の活動の情報を受け取りました。その後は、本人が自分で活動を選んで参加する形です。
わかったこと
孤独感が、1年後まで下がり続けていた
| 時期 | 孤独感の低下(参加者全体) |
|---|---|
| 3か月後 | 約11% |
| 6か月後 | 約12% |
| 1年後 | 約17% |
参加者全体の孤独感の点数は、3か月後に約11%、6か月後に約12%、1年後に約17%下がっていました。9週間の取り組みが終わったあとも下がった状態が続き、1年後にはさらに下がっていたことになります。
リット教授は「この方法に効果があり、その効果が続くことを示すランダム化比較試験が、いまやそろっています」と話しています。
自分のペースでも、仲間とでも
全体で見ると、2つの方法はどちらも同じように孤独感が下がっていました。仲間と出かけるグループだけでなく、短い面談と近所の自然の活動の情報をもとに、自分のペースで出かけるグループでも下がっていたのです。
一方で、もともと孤独感が強かった人や、気持ちが沈みがちだった人では、進行役のいるグループのほうが効果的でした。逆に、孤独感が軽めで気持ちが安定している人では、面談と情報提供だけでも同じように下がっていました。孤独を強く感じているときほど、「誰かと一緒に自然の中へ」が合っているのかもしれません。
リット教授は、自然の音や香り、景色が、取り組みの効果を高める「もう一人の進行役」のような役割を果たしている可能性があると述べています。
同じプロジェクトのフィンランドの試験でも
RECETASでは、フィンランドのヘルシンキでも別の試験が行われています。介護付きの住まいで暮らす高齢者を対象にした試験で、フレンズ・イン・ネイチャーに参加した人たちのほうが、参加しなかった人たちより孤独感が下がり、睡眠の面もよくなったと報告されています。
スペインでは、公衆衛生の機関が、フレンズ・イン・ネイチャーのような自然を使った社会的処方を、孤独への対策の「よい実践例」として認め始めています。
今日から実践できること:Zeverisからの提案
- 1. 週に1回、自然の中で過ごす時間を予定に入れる
- 試験のグループは週1回2時間でした。最初は30分の散歩からでも大丈夫です。カレンダーに「自然の時間」を書き込んでみましょう。
- 2. 近所の「自然の行き先」を3つ書き出す
- 公園、川沿いの道、植物園、神社やお寺の木立、近くの海や山。歩いて行ける場所を書き出しておくと、出かけるきっかけになります。
- 3. 一人のときは、季節の変化に気づく散歩を
- 花の色、鳥の声、風のにおい。一人で歩くときは、自然の中の小さな変化に目を向けてみましょう。
- 4. 誰かと一緒に楽しめる「自然の活動」を探す
- 市民農園や園芸の講座、野鳥観察の会、写生やスケッチの教室など。自治体や公民館の案内に、地域の自然の活動が見つかることがあります。
- 5. 孤独を強く感じる時期ほど、「誰かと一緒」を選んでみる
- 研究では、孤独感が強い人ほどグループのほうが合っていました。家族や友人、近所の人を「公園を歩かない?」と気軽に誘ってみましょう。
- 6. 9週間を目安に続けてみる
- 試験の取り組みは9週間でしたが、孤独感の低下は1年後まで続いていました。まずは2か月ほど、自然の時間を習慣にしてみましょう。
まとめ
スペインの320人を対象にした試験で、孤独を感じている大人が自然の中で過ごす取り組みをすると、孤独感が3か月後に約11%、1年後に約17%下がっていました。自分のペースで出かける方法でも、仲間と出かける方法でも孤独感は下がり、孤独感が強い人には仲間と一緒のほうが合っていました。
この週末は、近くの公園や水辺に出かけてみませんか。誰かを誘ってみるのもおすすめです。
※本記事は情報提供を目的としており、医師の助言や治療に代わるものではありません。
関連記事
- 月1回以上「森林を歩く」人は、幸福感・生きがい・日常生活の楽しさが高い傾向:日本人約3,500人の研究から
- 自然はどれくらい浴びればいい?――89研究が示した「緑30%・1回12分」という目安
- 「孤独だから不健康になる」だけではない――28年追跡調査で見えた、孤独と生活習慣の意外な関係
出典
- Coll-Planas L, Masó-Aguado M, Briones-Buizassa L, et al.; Litt JS. “Effectiveness of a nature-based social prescribing intervention on loneliness and health-related quality of life among vulnerable urban adults (RECETAS-BCN): an observer-blinded randomised controlled trial.” The Lancet Regional Health – Europe. 2026;69:101821(2026年8月18日オンライン公開). DOI: 10.1016/j.lanepe.2026.101821
https://doi.org/10.1016/j.lanepe.2026.101821 - ISGlobal「Helping People Connect with Nature and the Community Reduces Loneliness」(2026年8月20日)
https://www.isglobal.org/en/-/ayudar-a-las-personas-a-conectar-con-la-naturaleza-y-con-la-comunidad-reduce-la-soledad - University of Colorado Boulder「Time Spent in Nature Can Ease Loneliness」(Newswise、2026年10月14日)
https://www.newswise.com/articles/time-spent-in-nature-can-ease-loneliness - ClinicalTrials.gov NCT05488496「Testing a Nature-based Social Intervention on Loneliness: the RECETAS-BCN Trial」
https://clinicaltrials.gov/study/NCT05488496
