自然はどれくらい浴びればいい?――89研究が示した「緑30%・1回12分」という目安

3分でわかる!この記事の要点

結論

レビューでは「緑被率30%以上」「屋外で1回12分以上」が、健康との関連が見られた目安でした。

理由

89研究を整理した国際的なレビューで、複数の研究に共通するしきい値が見つかったためです。

アクション

近所の公園や緑道で過ごす15分ほどの時間を、週の予定に入れてみましょう。

「自然は体にいい」の、その先の疑問

自然に触れると気分が落ち着く。緑の多い場所に住む人のほうが健康状態がよい。こうした話は、ここ数年で広く知られるようになりました。まずは、その出発点になった研究を押さえておきましょう。

「週に合計120分」という数字を見たことがある人もいるかもしれません。これは英国の成人19,806人を対象にした2019年の研究(White氏ら、Scientific Reports)によるものです。

自然の中で過ごすレクリエーションの時間(街なかの公園や自然地、海辺、田園など)を週あたりで集計し、まったく行かない人と比べたところ、週120〜179分の人は「健康状態が良い」と答えるオッズが1.59倍、「生活満足度が高い」と答えるオッズが1.23倍でした。

さらに、この関連は週200〜300分あたりでピークに達し、それ以上増やしても上乗せは見られなかったと報告されています。なお、ここでの「健康」と「生活満足度」は、どちらも本人の自己申告による回答です。

ただ、いざ実行しようとすると、素朴な疑問が残ります。

どのくらい緑のある場所なら「自然に触れた」ことになるのか。
1回どのくらいいればいいのか。

この「量」の問題を正面から整理したレビューが、国際学術誌『Environmental Impact Assessment Review』第121巻(論文番号108495、2026年9月号。オンライン公開は2026年5月14日)に発表されました。中国・南京林業大学のJinguang Zhang氏らの研究グループによるもので、米クレムソン大学のMatthew Browning氏らも加わっています。

40,398本から89研究を選び出して整理した

研究チームは、系統的レビューの国際的な手順(PRISMA)にしたがって、7つの学術データベースから40,398本の論文をふるいにかけ、条件を満たす89研究を精査しました。観察研究と実験研究の両方を対象に、「自然との接触と健康の関係が、直線ではなく、ある量を境に変わるのかどうか」を見ていったものです。

このレビューの特徴は、「自然との接触」をひとまとめにせず、6つの側面に分けて整理したことです。

 

量(availability)

一定の範囲にどれだけ自然環境があるか。緑の面積や緑地の数

 

近さ(proximity)

自分のいる場所から自然までの距離

 

見える度合い(visibility)

ある場所から目に入る緑の量。窓からの眺めなど

 

1回あたりの時間(duration)

自然の中で過ごす時間の長さ

 

頻度(frequency)

どのくらいの間隔で自然に触れるか

 

映像の緑(simulated visible greenness)

写真、VR、360度動画などで見る自然

同じ「自然に触れる」でも、家の周りの緑の量と、公園で過ごす15分と、動画で森を眺めることは別の話です。それぞれについて、健康との関係が変わる「しきい値」があるのかを見ていきました。なお、これは「スコーピングレビュー」と呼ばれる整理の方法で、研究結果を一つの数値に統合するメタ分析とは異なります。集められたのも観察研究が中心です。

何が「良くなる」とされているのか

「自然は健康にいい」と言うとき、具体的に何が測られているのでしょうか。このレビューが集めた89研究で扱われていたのは、精神の健康が57.7%と最も多く、身体の健康が28.2%、その他が14.1%でした。

 

精神面

ストレスからの回復、心理的な苦痛、ウェルビーイング(心の健やかさ)、孤独感。

 

身体面

心血管の健康、ぜんそくのリスク、代謝に関わる問題(脂質異常、妊娠中の体重増加など)。

 

その他

高齢者の生活機能(日常の動作をどれだけ自立して行えるか)。

 

【注意したいポイント】

幅広い指標が並んでいますが、ここで注意したいのは、これらすべてに同じしきい値が当てはまると示されたわけではないという点です。レビューは「どの指標でも共通して見えてきた水準」を探したもので、指標ごとの関連の強さを比べたものではありません。また、研究の半数以上が精神の健康を扱っていたことから、しきい値の根拠も精神面に厚く、身体面には相対的に薄いという偏りがあります。

なぜ緑が健康と関わるのか(別の研究による整理)

今回のレビューはしきい値を探すことが目的で、仕組みそのものを検証したものではありません。ただ、この分野では、Markevych氏らが2017年に『Environmental Research』誌で示した整理が広く使われています。緑地が健康につながる道筋を、大きく3つに分けたものです。

 

害を減らす

大気汚染、騒音、暑さへのさらされ方を減らす。

 

回復させる

注意力の回復や、生理的なストレスからの回復を助ける。

 

高める

体を動かすことを促し、人とのつながりをつくりやすくする。

近所に木陰のある公園があれば、夏の暑さや車の騒音から少し離れられる(害を減らす)。ぼんやり緑を眺めれば、張りつめていた注意がゆるむ(回復させる)。散歩に出るきっかけになり、近所の人と顔を合わせる(高める)。一つの公園が、同時に3つの役割を果たしうるという見方です。

ただし、これは今回のレビューとは別の論文による枠組みであり、今回のしきい値がこの3つの道筋のどれによって生じたのかを示すものではありません。仕組みの解明は、まだ研究が続いている段階です。

一貫して見えてきた2つのしきい値

複数の研究で共通していたのは、周囲の緑の多さに関する2つの水準でした。

緑被率 30%以上

地表を緑が覆う割合(11研究)

NDVI 0.5以上

衛星画像から植生の多さを測る指標(8研究)

NDVI(正規化植生指数)は、衛星画像から植生の多さを測る指標です。標準的な尺度では-1から1の範囲で表され、値が大きいほど植物が豊かであることを示します。0.5以上は、比較的植生の多い場所を示す目安として使われます。ただし、同じ値でも土地の使われ方や季節、使う衛星データによって意味合いは変わります。

 

この水準を超えると健康指標が良くなる傾向が、複数の研究で共通して見られました。逆に言えば、緑がわずかに増えるだけでは健康との関連がはっきりせず、ある程度の量を超えたところで違いが見えてくる、という関係です。

ここが、このレビューの一番の論点でもあります。自然と健康の関係は「増えれば増えるほど、その分だけ良くなる」という一直線ではなく、曲線を描く。だからこそ「しきい値」という言葉が使われ、著者らは都市計画や医療の現場が目標として使える参照点になりうる、としています。国連の持続可能な開発目標(SDGs)の目標11「住み続けられるまちづくりを」に、緑の量の根拠ある数値を提供する、という位置づけです。

 

1回あたりの屋外での接触時間についても、同じ考え方が当てはまります。論文の本文には「少なくとも12分、理想は15〜20分」と記されています。あわせて、時間が長くなるほど健康との関連の上乗せは小さくなり、長時間では頭打ちになる傾向も示されています。短すぎると違いが出にくく、長くすればするほど良いというわけでもない。公園のベンチに座る、緑道を歩く。そのくらいの時間が、現実的で、かつ根拠のある目安ということになります。

「決められなかったこと」も、はっきり書かれている

このレビューでもう一つ注目したいのは、著者たちが「しきい値を出せなかった」と明記した項目があることです。それが、累積時間と頻度でした。研究ごとのばらつきが大きすぎて、一つの数字に絞り込めなかったのです。

つまり、冒頭で触れた「週に合計120分」という広く知られた目標は、現時点では複数の研究が同じ数字に収束している状態ではありません。もとの研究自体、120分を境に関連が見え始め、ピークは週200〜300分と報告しています。個々の研究として意味のある結果ですが、「これが確定した基準」とまでは言えない段階です。

室内の観葉植物や映像の緑についても、しきい値は文脈によって一貫しなかったと述べられています。VRや360度動画で自然を見る研究は増えていますが、どんな映像を、どんな場面で見るかによって結果が変わり、共通の水準は見いだせなかったということです。屋外に出ることの代わりになるかどうかは、まだ分かっていません。

日本の都市で、30%はどのくらいの水準か

では、緑被率30%というのは、日本の都市でどのくらいの水準なのでしょうか。

東京都の調査では、区部の「みどり率」は24.0%でした(令和5年=2023年調査、2024年10月公表)。5年前の調査より0.2ポイント減っています。多摩部は67.4%、都全域では52.1%です。

ただし、みどり率は緑が地表を覆う部分に公園区域と水面を加えた数え方で、レビューが扱う緑被率とは指標の定義が違います。数字をそのまま比べることはできません。それでも、都市部で30%という水準が簡単ではないことは伝わってきます。

この結果をどう受け止めればいいか

このレビューは観察研究を中心に集めたもので、著者自身が「暫定的な指針」と位置づけています。緑の多い地域に住む人ほど健康状態がよいという関連が見られたとしても、緑があるから健康になったのか、健康や生活にゆとりのある人が緑の多い場所に住みやすいのか、そこまでは分かりません。論文は、接触時間の取り方を変えて比べるランダム化比較試験(参加者をくじ引きのように振り分けて比べる方法)が必要だと結んでいます。

もう一つ大切なのは、「30%を満たす場所に住まないと意味がない」という話ではない、という点です。しきい値は、複数の研究で違いが見えやすかった水準であって、それ未満の緑が無価値だと示したものではありません。

今日から実践できること(提案)

以下は、このレビューで直接検証された方法ではなく、整理されたしきい値をふまえた提案です。

①

1回12分以上、できれば15〜20分を目安にする

短すぎると違いが出にくいとされる一方、長ければ長くなるほど良いというわけでもありません。昼休みに公園のベンチで15分、でも構いません。

②

「時間ができたら」ではなく、予定として確保する

通勤・通学や買い物のルートに緑のある道を組み込むと、意識しなくても続きます。

③

行き先を選べるなら、緑の多い場所を

街路樹が並ぶ通り、樹木のある公園など、周囲に緑が占める割合が高い場所を選んでみる。

④

窓から緑が見える席や部屋を選べる場面では、そちらを

「見える度合い」もレビューの6側面の一つです(ただし、しきい値は示されていません)。

⑤

暑さや騒音から離れられる場所として使う

緑地が健康につながる道筋の一つに「害を減らす」があります。夏の日中なら、木陰のある公園は涼しさの面でも理にかなっています。

⑥

人と一緒に行く日をつくる

別の整理では「体を動かすこと」「人とのつながり」も道筋に挙げられています。散歩の相手がいると、頻度が上がりやすくなります。

⑦

「週に何分」という合計にこだわりすぎない

累積時間と頻度については、まだ確かな目安が定まっていません。

研究の詳細(Scientific Evidence)

まとめ

 

自然との接触が健康と関わることは多くの研究で報告されてきましたが、「どれくらい」という量の問題は整理されていませんでした。今回、89研究を精査したレビューで、周囲の緑被率30%以上、NDVI 0.5以上、屋外での1回12分以上(理想は15〜20分)という目安が示されました。

 

扱われていたのは、ストレスからの回復や心理的な苦痛、ウェルビーイング、孤独感といった精神面の指標が中心で(57.7%)、心血管や代謝、高齢者の生活機能なども含まれます。関係は一直線ではなく、ある量を超えたところで違いが見え、そこから先は上乗せが小さくなっていく。この「曲線」を前提に目標を立てよう、というのがレビューの主張です。

 

一方で、累積時間と頻度についてはしきい値を特定できず、室内や映像の緑についても一貫した水準は見つかっていません。これは観察研究を中心とした暫定的な指針であり、因果関係を確かめるにはさらなる研究が必要とされています。

まずは近所の公園に15分。今の研究から言えるのは、そのくらいの具体性です。

 

出典・参考文献

Qiu M, Browning MHEM, Zhang R, et al. “Dose thresholds of urban nature contact for human health: A critical scoping review.” Environmental Impact Assessment Review. 2026;121:108495.

White MP, Alcock I, Grellier J, et al. “Spending at least 120 minutes a week in nature is associated with good health and wellbeing.” Scientific Reports. 2019;9:7730.

Markevych I, Schoierer J, Hartig T, et al. “Exploring pathways linking greenspace to health: Theoretical and methodological guidance.” Environmental Research. 2017;158:301-317.

東京都「東京のみどりの現状等『みどり率』調査結果」2024年10月28日公表(令和5年調査)

※内容は2026年9月時点の公開情報に基づきます

※本記事は情報提供を目的としており、医師の助言や治療に代わるものではありません。

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