
3分でわかる!この記事の要点
- 結論
- くるみを毎日40g、8週間食べた健康な若い大人31人で、怒りや疲れなどをまとめた「気分の乱れ」の得点が低くなりました
- 理由
- くるみの成分が腸内細菌の助けも借りながら体の中で使われ、気分の土台を支えている可能性があります
- アクション
- いつものおやつを無塩・素焼きのくるみに置き換えましょう。1日分を小皿や小袋に分けておくと続けやすくなります
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「減らす」の次は、「何に替えるか」
昨日の記事では、スナック菓子や菓子パンなどの超加工食品を「減らす」話をお届けしました(超加工食品を4週間減らしたら、うつの症状が軽くなった)。
では、その代わりに何を手に取ればいいのでしょうか。今日はその置き換え先のひとつ、くるみが主役です。
くるみは、オメガ3脂肪酸のα-リノレン酸、食物繊維、ポリフェノール、そしてセロトニン(気分に関わる脳内の物質)の材料になるトリプトファンを含むナッツです。
スペインのバルセロナ大学の研究チームによると、健康な若い大人31人がくるみを毎日40g、8週間食べたところ、ナッツを食べない8週間とくらべて「気分の乱れ」の得点が低くなりました。結果は2026年9月29日、食品と健康の学術誌『Food & Function』に掲載されています。
毎日のひとつかみが、腸を通って、気分の土台を支えているのかもしれません。
研究の内容:同じ人が「くるみを食べる8週間」と「ナッツを食べない8週間」を体験
誰を、どう調べたか
- 参加者
- 20〜35歳の健康な大人31人(平均24歳、約9割が女性)。体格は標準的で、ほどよく体を動かす習慣のある人たちです。84人の応募から36人が参加し、31人が最後までやり遂げました。
- 方法
- どちらの期間から始めるかをくじ引きのような方法(無作為)で決めました。一方の期間は、くるみ40gを毎日、夕食と一緒に食べます。もう一方の期間は、ナッツやナッツ入りの食品を食べません。それぞれ8週間で、あいだに2週間の休みをはさんで入れ替えました。
- 掲載
- Food & Function(2026年9月29日、査読済み)
同じ人が両方の期間を体験するので、それぞれの期間の調子を比べられる形です。どちらの期間も、栄養士から地中海式の食事(野菜、果物、豆、魚、オリーブオイルを中心にした食事)の助言を受けていました。
気分は「POMS(気分プロフィール検査)」という質問票で測りました。緊張、落ち込み、怒り、疲れ、混乱といった気分をまとめた点数が「気分の乱れ」で、点数が低いほど気分が安定していることを表します。あわせて、朝いちばんの尿も調べています。
研究を率いたのは、バルセロナ大学のマリア・イスキエルド=プリド教授(栄養・食品科学)です。この研究は、カリフォルニアくるみ協会の支援を受けて行われました。
わかったこと①:「気分の乱れ」の得点が4.85点低くなった
くるみを食べた8週間は、ナッツを食べない8週間とくらべて、「気分の乱れ」の得点が4.85点低くなりました。
| 調べた項目 | くるみを食べた期間の結果 |
|---|---|
| 気分の乱れ(POMSの合計点) | 4.85点低い |
| 怒り・疲れ | 下がる傾向(統計的にはっきりした差とまでは言えない) |
変化が見られたのは、気分全体の「ゆらぎ」の部分でした。くるみは脂質の多い食品ですが、8週間続けても体重や体脂肪率に差は出ていません。
わかったこと②:尿の中で、2種類の物質が増えていた
くるみを食べた期間には、尿の中で次の2つが増えていました。
- 5-HIAA:セロトニンが体の中で使われたあとにできる物質
- ウロリチンA・ウロリチンB:くるみのポリフェノールを、腸内細菌が作り替えた物質
そして、ウロリチンが増えた人ほど5-HIAAも増えており、5-HIAAが多いほど「気分の乱れ」の得点が低い、というつながりも見られました。ストレスに関わるホルモンのコルチゾールには、差がありませんでした。
なぜくるみが気分に関わるの?
研究チームが注目しているのは、腸と気分のつながりです。
くるみのポリフェノールは、そのままでは体に吸収されにくい成分です。腸にすむ細菌がこれをウロリチンに作り替えてくれます。また、くるみに含まれるトリプトファンは、セロトニンの材料になります。
くるみを食べる。腸内細菌がはたらく。体の中のセロトニンの流れが変わる。そして気分が整う。今回の結果は、そんな道すじがある可能性を示しています。
尿からわかるのは、体全体でのセロトニンの使われ方です。脳の中のセロトニンを直接測ったわけではないので、くわしい仕組みはこれからの研究で確かめられていきます。
10年前の試験から、一歩前へ
くるみと気分の研究は、今回が初めてではありません。
2016年に米国で行われた試験では、大学生64人が、くるみ入りとくるみなしのバナナブレッドを8週間ずつ食べました。このとき気分が改善したのは男性だけで、女性には変化が見られませんでした。
今回の試験は参加者の約9割が女性で、その中で「気分の乱れ」の得点が低くなっています。くるみと気分のつながりが、女性でも見られる可能性が出てきました。
研究チームは、より人数が多く、年齢や背景がさまざまな人を対象にした、より長い期間の研究が必要だとしています。
ナッツは「気分」だけでなく「考える力」にも
くるみを含むナッツ全体については、別の研究もあります。
オーストラリア・モナシュ大学の研究チームは、米国の長期健康調査「フラミンガム心臓研究」の参加者1,771人(平均61歳)を分析しました。すると、ナッツを多く食べる人ほど、処理速度や記憶、推論力などをまとめた認知機能の点数が高い傾向が見られました(Food & Function、2026年8月)。
こちらは、ふだんの食事と認知機能の関係を調べた研究で、今回の試験とは調べ方が異なります。それでも、間食にナッツを選ぶことを後押ししてくれる結果です。
くわしくは、こちらの記事で紹介しています。
ナッツを多く食べる人ほど認知機能が高い傾向――1,771人の分析で「身体活動が少ない人・食事の質が低い人」に強い関連
3分でわかる!この記事の要点結論ナッツ摂取量が多い人ほど、記憶や思考のテスト成績が高い傾向が見られました。理由身体活動が少ない人・食事の質が低い人で関連が強く、・・・
zeveris今日から実践できること:Zeverisからの提案
ポイントは「足す」のではなく「置き換える」ことです。くるみ40gには、次の栄養が含まれています。
| くるみ(いり)40gあたり | 量 |
|---|---|
| エネルギー | 約285kcal |
| 脂質 | 約27.5g(うちオメガ3脂肪酸 約3.6g) |
| たんぱく質 | 約5.8g |
| 食物繊維 | 約3.0g |
日本食品標準成分表(八訂)増補2023年の「くるみ・いり」の値から計算しています。
- 1. いつものおやつを、無塩・素焼きのくるみに置き換える
- スナック菓子や菓子パンを食べていた時間に、くるみをひとつかみ。40gは約285kcalあるので、いつもの間食と入れ替える形にすると、1日の食事全体のバランスを保ちやすくなります。
- 2. まずは半分の20gから始める
- いきなり40gでなくても大丈夫です。少ない量から始めて、自分の食事や体調に合わせて調整しましょう。
- 3. 刻んで、料理にのせる
- ヨーグルト、サラダ、和え物に。ほうれん草のくるみ和えや、味噌汁の仕上げに散らすのもおすすめです。今回の研究でも、参加者は夕食と一緒に食べていました。
- 4. 1日分を小皿や小袋に分けておく
- 袋から直接食べると、つい手が伸びます。1日分をあらかじめ取り分けておくと、食べすぎを防げます。
- 5. 新鮮なうちに食べきる
- くるみの油は空気にふれると風味が落ちやすいので、開封後は密閉して冷蔵庫へ。小分けのパックを選ぶのも手軽です。
- 6. アレルギーのある方は避ける
- くるみは、食品表示で表示が義務づけられているアレルギーの原因食品(特定原材料)です。くるみやほかのナッツにアレルギーのある方は食べないでください。初めて食べるお子さんは、少量から様子を見ましょう。
まとめ
バルセロナ大学の研究チームによる31人の試験では、くるみを毎日40g食べた8週間に、ナッツを食べない8週間とくらべて「気分の乱れ」の得点が4.85点低くなりました。尿の中では、セロトニンが使われたあとにできる物質と、くるみのポリフェノールを腸内細菌が作り替えた物質が増えていました。研究チームは、腸を通じて気分が支えられている可能性を考えています。
超加工食品を「減らす」。その空いたところに、くるみを「置く」。今日のおやつから、ひとつかみ分を入れ替えてみませんか。
※本記事は情報提供を目的としており、医師の助言や治療に代わるものではありません。
出典
- Zerón-Rugerio MF, Parilli-Moser I, Gonzalez-Rodriguez A, et al. “Walnut consumption improves mood and is associated with increased urinary excretion of 5-hydroxyindoleacetic acid and urolithins in a randomized crossover trial.” Food & Function. 2026年9月29日掲載. DOI: 10.1039/d6fo00807k
Food & Function の論文ページ - News-Medical「Eating walnuts daily may boost mood and shift serotonin-related metabolism」(2026年10月2日)
News-Medical の記事 - California Walnut Commission プレスリリース「Daily Walnut Consumption May Improve Mood in Young Adults」(2026年10月1日)
プレスリリース - Pribis P. “Effects of Walnut Consumption on Mood in Young Adults—A Randomized Controlled Trial.” Nutrients. 2016;8(11):668. DOI: 10.3390/nu8110668
Nutrients の論文ページ - 文部科学省 食品成分データベース「種実類/くるみ/いり」(日本食品標準成分表(八訂)増補2023年)
食品成分データベース - 日本栄養士会「【消費者庁】『くるみ』がアレルギー表示の義務表示に追加される」
日本栄養士会の記事
