歩数だけじゃない。歩くペースが速めの人は死亡リスクが低かった

3分でわかる!この記事の要点

結論
1日5,000歩未満でも、1分約80歩のペースで歩く人は、死亡リスクが28%低い関連がありました
理由
歩数を増やすことだけでなく、歩くペースを上げることも、死亡リスクの低さと関連していたためです
アクション
歩数を増やせない日は、1日のどこかで「少しペースを上げて歩く時間」を作ってみましょう
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「1日1万歩」は、正直ハードルが高い

健康のために「1日1万歩」を目指したことがある人は多いと思います。でも、在宅勤務の日や忙しい日は、5,000歩にも届かないことがあります。

そんな人にとって参考になりそうな研究を、オーストラリアのシドニー大学、モナシュ大学などの研究チームが、2026年9月、学術誌『British Journal of Sports Medicine』に発表しました。

調べたのは、「1日の歩数」と「歩くペース」の組み合わせです。歩数が少なくても、ペースが速めの人は死亡リスクが低いのか。その答えに近づく結果が出ています。

Zeverisでは以前、同じシドニー大学のグループによる歩数の研究を紹介しました。今回はその続きとして、歩数に「ペース」を掛け合わせた研究です。

歩数×ペースで、死亡リスクを比べた

どんな研究?

使われたのは、英国の大規模な健康調査「UKバイオバンク」のデータです。6万4,743人(平均61.5歳)が手首に活動量計を7日間つけ、毎日の歩数と歩くペースを記録しました。その後、約8年間の追跡で、1,697人が亡くなっています。

「歩くペース」は、少し独特な測り方をしています。

歩くペースの測り方
  • 1日のうち、歩行ペースが最も高かった30分間を選ぶ(連続した30分でなくてよい)
  • その30分間の、1分あたりの歩数を平均する
  • 測定した日で平均する

つまり、1日の中で「最も歩行ペースが高かった30分間」の、1分あたりの歩数です。

比べる基準にしたのは、1日の歩数が5,000歩未満で、1分あたり約45歩のペースで歩いていた人たちです。そこから、歩数とペースの組み合わせごとに、死亡リスクがどれだけ違うかを調べました。年齢や性別、喫煙、飲酒、食事、睡眠などの影響は、できるだけ差し引いて分析しています。

わかったこと

基準の人たち(5,000歩未満、1分約45歩)と比べたときの、あらゆる原因による死亡リスクです。

1日の歩数 歩くペース(1分あたりの歩数) 死亡リスク
5,000歩未満 約80歩 28%低い
5,000〜7,500歩 約60歩 30%低い
7,500〜10,000歩 約100歩 43%低い(最も低い)

ペースの数字は、研究チームが結果を説明するために示した代表的な例です。実際の分析では、各歩数グループの中でペースを連続的に変えて、リスクがどう変わるかを見ています。

ポイントは1段目と2段目です。5,000歩に届かなくてもペースが速めの人と、5,000〜7,500歩をゆっくりめのペースで歩く人で、リスクの低さはほぼ同じでした。

心臓や血管の病気(心血管病)で亡くなるリスクについても、別に分析されています(対象の除外条件が異なるため7万75人、心血管病による死亡502人)。こちらも似た傾向で、最もリスクが低かったのは、7,500〜10,000歩を1分約90歩で歩く人(47%低い)でした。

研究チームは、歩数とペースのどちらも大切で、歩数を増やしにくい人にも「柔軟な道筋」があるとまとめています。言い換えると、歩数を増やすことだけでなく、歩くペースを上げることも、死亡リスクの低さと関連していたということです。

「1分80歩」は、速歩きではない

ここで注意したいのは、1分80歩というペースは、一般的な感覚での「速歩き」ではないことです。研究チームも、1分100歩が「中強度の運動」の目安としてよく使われる数字だと述べています。

つまり今回の結果は、「基準の人たち(1分約45歩)より、ペースが高めだった」という意味です。息が上がるほど速く歩く必要はなく、普段より少しテンポを上げる程度の違いが、リスクの低さと関連していました。

読むときの注意

観察研究です。歩くことがリスクを下げたとまでは言えません。「低い関連があった」という結果です。

  • もともと病気がある人ほど、歩数が少なく、ペースも遅い可能性があります。その影響を完全に取り除くことはできません
  • 英国の中高年のデータです。UKバイオバンクへの参加に応じた人は、招待された人の5.5%にとどまり、英国全体を代表しているとは限りません。日本人にそのまま当てはまるかもわかりません
  • 歩数は手首の活動量計から推定しており、腕の動きを歩数と取り違えることもありえます
  • 「1日30分、1分80歩で歩けばいい」という意味ではありません。ペースの物差しは、1日の中でペースが高かった30分(連続でなくてよい)の平均です

今日からできること(提案)

以下は、研究結果をもとにした日常での提案です。この方法そのものを試して効果を確かめた研究ではありません。

1. 自分の歩くペースを知る
いつものペースで歩きながら、10秒間の歩数を数えて6倍します。それが、だいたいの「1分あたりの歩数」です。
2. 通勤や買い物の途中に「少しペースを上げる区間」を作る
駅までの道、スーパーまでの道など、「この区間は少し速めに」と決めておきます。今回のペースの物差しは連続した30分ではないので、細切れでかまいません。1〜2分の短い活動を日常に入れる考え方は、ジムに行く時間がない人へ。日常生活の中の「1分間」が寿命を延ばす科学でも紹介しています。
3. ペースを上げるのが難しい人は、歩数を増やす
今回の結果では、ゆっくりめのペースでも5,000〜7,500歩歩く人は、リスクが低い関連がありました。ペースにこだわらず、歩く機会を増やす道もあります。
4. 無理はしない
膝や腰が痛む人、心臓の病気で治療中の人、運動を制限されている人は、ペースを上げる前に医師に相談してください。

まとめ

英国の6万4,743人を約8年間追跡した研究で、1日5,000歩未満でも、歩くペースが比較的速い人(1分約80歩)は、ゆっくり歩く人(1分約45歩)に比べて死亡リスクが28%低いという関連が見られました。これは、5,000〜7,500歩をゆっくりめのペースで歩く人とほぼ同じ水準です。

歩数を増やすことだけでなく、歩くペースにも目を向けることが大切である可能性を、この研究は示しています。ただし観察研究のため、ペースを上げること自体が死亡リスクを下げたとは断定できません。

「歩数が足りない日はもうだめ」と考える必要はなさそうです。無理のない範囲で歩く機会を増やし、余裕があれば少しペースを上げてみる。そんな選択肢を考えるきっかけになる研究です。

※本記事は情報提供を目的としており、医師の助言や治療に代わるものではありません。

出典

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