映画・美術館・劇場に出かける人ほど、体の年齢が若い傾向―東京科学大学が英国の1,899人を分析

3分でわかる!この記事の要点

結論
映画館や美術館、劇場によく出かける人ほど、体の年齢が若い傾向が見られました
理由
同じ人を追っても、出かける頻度が高い時期ほど体の年齢が若くなっていたためです
アクション
数か月に1回、映画やアート、コンサートの予定を先に入れてみましょう
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「楽しみの外出」は、体にも届いている?

映画を観に行く。美術館をのぞく。コンサートや舞台に足を運ぶ。

こうした外出は、気分転換や楽しみのためのもの、と考える人が多いのではないでしょうか。

東京科学大学の研究チームは、この「文化的な外出」と体の状態との関係を調べました。分析したのは、英国の50歳以上1,899人のデータです。結果は2026年7月、疫学と公衆衛生の専門誌『Journal of Epidemiology and Community Health』に掲載されました。

見えてきたのは、よく出かける人ほど「体の年齢」が若い、という傾向です。楽しみのための外出は、心だけでなく、体の若さとも結びついているのかもしれません。

研究の内容:外出の頻度と「体の年齢」を比べた

英国の50歳以上を追い続ける調査を使った

使われたのは、英国の高齢化縦断調査(ELSA)です。イングランドに住む50歳以上の人を、長い年月にわたって追い続けている調査で、国全体の姿を映すように参加者が選ばれています。

研究チームは、2004〜2005年、2006〜2007年、2008〜2009年の3回の調査のうち、2回以上に参加した1,899人(男性46.9%)を分析しました。記録の数は、のべ4,207回分です。

「文化的な外出」は、3種類の頻度を点数に

参加者は、次の3種類の場所にどれくらい行くかを答えました。

  • 映画館
  • 美術館・博物館
  • 劇場・コンサート・オペラ

それぞれを「まったく行かない」の0点から「月に2回以上」の5点までの6段階で採点し、合計0〜15点の「文化的な外出のスコア」にしています。

「体の年齢」は、10項目の測定から計算

もうひとつの主役が「体の年齢」(生理学的年齢)です。

実際の年齢が同じでも、体の状態は人によって違います。体の年齢は、「体の状態から見ると何歳くらいにあたるか」を表したものです。

この研究では、看護師が測定した次の10項目から計算されました。

  • 血圧に関わる2項目(脈圧、拡張期血圧)
  • 肺の働き(1秒間に吐き出せる息の量)
  • ヘモグロビン
  • フィブリノゲン(血液の固まりやすさに関わるたんぱく質)
  • HbA1c(血糖の状態を表す数値)
  • LDLコレステロール
  • BMI
  • 握力
  • 歩く速さ

わかったこと①:よく出かける人は、体の年齢が実際の年齢より若かった

まず、映画館、美術館・博物館、劇場・コンサートに、数か月に1回以上出かける人を見てみます。

実際の年齢
平均68.7歳
体の年齢
平均66.9歳

体の年齢のほうが、実際の年齢より1.8歳若くなっていました。

わかったこと②:同じ人の変化を追っても、同じ傾向

この研究の特徴は、ここからです。

研究チームは、人と人を比べるだけでなく、同じ人のなかでの変化にも注目しました。ある人がよく出かけていた時期と、あまり出かけなかった時期とで、体の年齢がどう違うかを見る方法です。この方法なら、生まれつきの体質や性格のように、時間がたっても変わらない要素の影響を取り除けます。

その結果、文化的な外出のスコアが1点高いと、体の年齢が0.085年(約31日)若い、という関係が見られました。年齢、収入、仕事、持病、運動の頻度などの変化を考慮したうえでの結果です。

1点の違いとは、たとえば映画館に行く頻度が「年に1〜2回」から「数か月に1回」に1段階上がる、といった変化にあたります。

研究チームによると、文化的な外出と体の年齢の関係を、時間を追って確かめた研究はこれが初めてです。

わかったこと③:4年後の体の年齢とも結びついていた

研究チームは、4年後の体の年齢との関係も調べています。

文化的な外出のスコアが高い人ほど、4年後の体の年齢も若い傾向がありました(スコア1点あたり0.089年)。外出の習慣と体の若さの関係は、その時だけのものではない可能性があります。

なぜ、出かけることが体の年齢と関わるのか

研究チームは、考えられる道筋を3つ挙げています。

人とのつながりが深まる
誰かと一緒に出かけたり、会場で人と交流したりする機会になる
健康的な生活習慣につながる
外出そのものが、体を動かすきっかけになる
心の健康を支える
楽しみや感動が、気分を整え、ストレスを和らげる

研究チームは、文化的な外出を「自分で変えられる行動」と位置づけています。そのうえで、距離や費用の面で、催しに参加しやすい環境をつくることも提案しています。

関連研究:DNAの目印で見ても、同じ方向

芸術・文化と老化の関係は、別の方法でも調べられています。

英国ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)の研究チームは、英国の成人3,556人の血液を調べました(専門誌『Innovation in Aging』、2026年)。使ったのは、DNAについた目印から老化の進み具合を推定する「エピジェネティック時計」という指標です。

こちらの研究が対象にしたのは、読書、音楽を聴く、美術館や博物館に行くなど、より幅広い芸術・文化活動です。結果は次のとおりでした。

  • 週に1回以上参加する人は、ほとんど参加しない人に比べて、老化のペースが約4%ゆるやか
  • 月に1回の人は約3%、年に3回以上の人は約2%ゆるやか
  • 週1回以上の参加で見られた差は、週1回の運動で見られた差と同じくらい

東京科学大学の研究が見たのは「血圧や握力など、体の測定値から計算した年齢」。UCLの研究が見たのは「DNAの目印から推定した老化のペース」。測ったものも、対象にした活動の範囲も違います。それでも、「文化に親しむ人ほど若い傾向」という点では、同じ方向を向いています。

今日から実践できること:Zeverisからの提案

楽しみの予定を、ひとつ先に入れてみる。そこから始めてみませんか。

1. 数か月に1回、映画等の予定を先に入れる
研究で「よく出かける人」とされたのは、数か月に1回以上のペースでした。観たい映画の公開日や、気になる展覧会の会期を、先に手帳やカレンダーに書いておきましょう。
2. 博物館や美術館、劇場に行ってみる
研究のスコアは、映画館、美術館・博物館、劇場・コンサートの3種類の合計です。映画はよく観るという人は、博物館や美術館、地元のホールの舞台やコンサートにも足を運んでみましょう。
3. 誰かを誘って出かける
家族や友人と一緒に行けば、帰り道に感想を話す時間も生まれます。人とのつながりを深めるきっかけにもなります。
4. 行き帰りと館内で、少し歩く
ひと駅分歩いて向かう。展示室をゆっくり一周する。出かけること自体を、体を動かす時間にしてみましょう。
5. 無料や割引の日、近所の催しを活用する
美術館の無料開館日、映画館の割引デー、地域のホールや図書館の催し。費用や距離の負担が小さい選択肢を、いくつか知っておくと続けやすくなります。

まとめ

東京科学大学の研究チームは、英国の50歳以上1,899人のデータを分析しました。映画館、美術館・博物館、劇場・コンサートに数か月に1回以上出かける人は、体の年齢が実際の年齢より1.8歳若くなっていました(実際の年齢 平均68.7歳、体の年齢 平均66.9歳)。

同じ人の変化を追った分析でも、外出のスコアが1点高いと、体の年齢が0.085年(約31日)若いという関係が見られています。UCLの研究でも、芸術・文化活動に親しむ人ほど、老化のペースがゆるやかな傾向がありました。

楽しみのための外出は、体の若さとも結びついている可能性があります。次の休みに、観たい映画や気になる展覧会の予定を、ひとつ入れてみませんか。

※本記事は情報提供を目的としており、医師の助言や治療に代わるものではありません。

出典

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