週1回のサルサを8週間―人と踊る習慣で、若者の気分の落ち込みが軽くなった

3分でわかる!この記事の要点

結論
週1回のサルサ教室に8週間通った若者は、抑うつ症状の得点が平均で約3点下がりました
理由
体を動かす・人と関わる・楽しむ。この3つが重なる時間が、気分を上向かせる可能性があります
アクション
好きな曲を1曲かけて体を揺らす。気が向いたら、初心者向けの体験レッスンへ
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「人と一緒に踊る」は、気分にどう働く?

気分が沈みがちなときは体を動かすといい、とよく言われます。ウォーキングやヨガ、筋トレなど、運動が気分の落ち込みを和らげることは、これまでも数多く報告されてきました。

では、「人と一緒に踊る」ことはどうでしょうか。

ダンスは、体を動かすだけではありません。相手と息を合わせる。言葉を使わずにやりとりする。できなかったステップが、できるようになる。運動と人との関わりが、ひとつの時間のなかに重なっています。

イギリス・オックスフォード大学の研究チームは、この点に注目しました。気分の落ち込みは15〜25歳のころに始まることが多い一方で、若い人ほど相談や治療につながりにくいことが知られています。研究チームが探していたのは、若者自身が「自分たちのためのものだ」と思える、身近で楽しい方法でした。

どのダンスにするかは、若者たちに相談して決めています。サルサ、ケーリー、カポエイラ、協力して体を動かすゲーム。それぞれの映像を見てもらい、「同世代がいちばん楽しめそうなもの」として選ばれたのがサルサでした。

研究は2026年7月15日、精神医学の専門誌『Psychological Medicine』にオンライン公開されました。

研究の内容:サルサ教室に通うグループと、通わないグループ

対象は、気分の落ち込みがある18〜24歳の121人

参加したのは、イギリス・オックスフォード周辺に住む18〜24歳の121人です。全員、「PHQ-9」という質問票で、軽度からやや重度の抑うつ症状がありました。

PHQ-9は、気分の落ち込みや、ものごとへの興味の薄れなど9つの項目について、この2週間にどのくらいあったかを答える質問票です。得点は0〜27点で、高いほど症状が重いことを表します。今回の対象は、参加の申し込みの時点で5〜19点だった人たちです。うつ病と診断されているかどうかは、参加の条件ではありませんでした。

研究チームは121人を、次の2つのグループに無作為に(くじ引きのように偶然にまかせて)分けました。

サルサのグループ
週1回のサルサ教室に8週間通う(8回のうち6回以上の参加が条件)
通わないグループ
同じ時期に同じ質問票に答えるが、教室には通わない(12週間の研究が終わったあとで、教室に参加できる)

最後まで参加し、分析の対象になったのは93人(サルサに通ったグループ49人、通わなかったグループ44人)。平均年齢は21.46歳でした。

教室は、大学のダンスサークルが開く「ふつうのクラス」

教室は、研究のために特別に用意されたものではありません。オックスフォード大学のサルササークルなど3つのダンスサークルが開いている通常のクラスです。経験のある6人の講師が教え、参加者は、研究とは関係のない一般の参加者に混じって踊りました。まわりからは、誰が研究の参加者なのかわからない形です。

この研究が比べたもの

比べたのは、「サルサ教室に通うこと」と「その間は通わないこと」です。ほかの運動や、カウンセリング、薬と比べた研究ではありません。サルサが、ほかのダンスより優れているかを調べたものでもありません。

研究チームは、ほかのソーシャルダンスでも同じようなよい変化が見られるかもしれないと述べています。

わかったこと①:抑うつ症状の得点が、平均で約3点下がった

質問票には、開始時、4週後、8週後(教室の最終週)、12週後の4回答えてもらいました。PHQ-9の平均点は次のとおりです。

時点 サルサに通ったグループ(49人) 通わなかったグループ(44人)
開始時 9.33点 9.59点
4週後 7.94点 9.50点
8週後(教室の最終週) 7.78点 8.84点
12週後 6.37点 8.82点

サルサのグループは、開始時から12週後までに平均で約3点下がりました。通わなかったグループの変化は1点未満です。12週後の時点で、2つのグループの差は2.45点でした。

PHQ-9では、本人が「変わった」と感じられる変化の目安が1.7点とされています。今回の差は、その目安を上回っていました。

開始時の症状が軽めだった人でも、やや重めだった人でも、サルサのグループのほうが大きく下がる傾向は同じでした。教室が終わったあとの12週後まで、得点が下がり続けていた点も目を引きます。

わかったこと②:人と関わる場面での不安が下がり、毎日の幸福度が上向いた

抑うつ症状のほかにも、よい変化が見られました。

  • 人と関わる場面での不安:サルサのグループは回を追うごとに下がり、通わなかったグループより大きく下がりました
  • 毎日の幸福度:参加者は毎日、携帯電話のメッセージで「今日の幸福度」を1〜10点で答えました。サルサのグループは、通わなかったグループよりも上向き方が大きくなっていました
  • 人との関わりを楽しむ気持ち:通わなかったグループでは12週間のあいだに下がっていましたが、サルサのグループでは保たれていました

わかったこと③:教室を楽しめた人ほど、得点が低い傾向

サルサのグループは、毎回のクラスのあとに「今日のクラスはどのくらい楽しかったか」「どのくらいつながりを感じたか」「どのくらい幸せを感じるか」の3つに答えました。この答えが前向きだった人ほど、抑うつ症状の得点が低い傾向が見られています。

教室そのものの評判も上々でした。教室に通った参加者へのアンケートでは、もっとも多かった答えが「まったく問題なく受け入れられる」。「受け入れられない」と答えた人はいませんでした。自由記述には、気さくで熱心な講師がよかった、クラスのあとは気分が上向いた、といった声が寄せられています。

研究を率いたブレナン・デラトル氏は、サルサが特効薬だという話ではないとしたうえで、体を動かし、人と関わり、心から楽しめることをするのが、気分に確かな違いをもたらしうると話しています。専門家によるケアの代わりではなく、それと並行してできることとして、です。

今日から実践できること:Zeverisからの提案

サルサでなくてもかまいません。「体を動かす・人と関わる・楽しむ」の3つを、少しずつ日常に。

1. 好きな曲を1曲かけて、部屋で体を揺らしてみる
振り付けはいりません。1曲ぶん、3〜4分。肩や足でリズムをとるところからで十分です。
2. 初心者向けのダンス体験レッスンを1回のぞいてみる
今回の研究の参加者も、ここ半年はペアダンスの教室に通っていなかった人たちでした。体験レッスンや見学ができる教室を、1か所探してみましょう。
3. 友人や家族を誘って、一緒に体を動かす時間をつくる
ダンスに限らず、散歩やラジオ体操でも。誰かと同じリズムで動く時間をつくってみてください。
4. 「週に1回」と曜日を決める
研究の教室は週1回でした。毎日でなくても、決まった曜日に予定を入れておくと続けやすくなります。
5. うまく踊るより、楽しむことを優先する
研究では、教室を楽しめた人ほど、得点が低い傾向でした。上手かどうかより、自分が楽しいと感じられるものを選びましょう。

気分の落ち込みが続いてつらいときは、ひとりで抱えず、医療機関や相談窓口も頼ってください。体を動かす時間は、そうしたケアと一緒に取り入れられます。

まとめ

オックスフォード大学の研究チームは、軽度からやや重度の抑うつ症状がある18〜24歳の121人を、週1回のサルサ教室に8週間通うグループと、その間は通わないグループに無作為に分けました。93人のデータを分析したところ、サルサのグループでは抑うつ症状の得点(PHQ-9)が平均で約3点下がり、通わなかったグループの変化は1点未満でした。人と関わる場面での不安も下がり、毎日の幸福度も上向いています。

週に一度、音楽に合わせて誰かと動く時間が、心を軽くする助けになるのかもしれません。まずは、好きな曲を1曲かけるところから始めてみませんか。

※本記事は情報提供を目的としており、医師の助言や治療に代わるものではありません。

出典

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