
3分でわかる!この記事の要点
- 結論
- ヒノキの根の香りを寝室で2週間使うと、夜中に起きていた時間が約29%短くなりました
- 理由
- 心地よく懐かしい木の香りが、眠りはじめの脳を深い眠りへ導きやすくする可能性があります
- アクション
- 寝る前の数分、ヒノキなど好みの木の香りを、枕元から少し離して置いてみましょう
夜中に目が覚める。その悩みに「木の根っこ」から
夜中に何度も目が覚める。朝起きても、疲れが抜けていない。年齢を重ねるにつれて、そんな眠りの悩みは増えていきます。とくに40〜50代の女性は、睡眠の悩みを抱えやすいことが知られています。
そこで注目されたのが、ヒノキです。
ヒノキは日本を代表する木材で、お風呂や建物に使われてきました。あの香りを嗅ぐと落ち着く、という人も多いはずです。枝葉や幹から取った精油(アロマオイル)については、気分や体への働きを調べた研究がいくつもあります。
ところが、木を伐ったあとに残る「根」は、ほとんど使われてきませんでした。そのまま朽ちるか、捨てられるかです。
九州大学大学院農学研究院の清水邦義准教授らは、香川県高松市の住宅メーカー・株式会社旺建と共同で、この根から取った精油の香りが眠りに役立つかを調べました。研究は2026年9月1日、木材科学の専門誌『Journal of Wood Science』にオンライン公開されています。
研究の内容:いつもの寝室で、2週間ずつ
参加したのは35〜60歳の日本人女性12人
参加したのは、35〜60歳の日本人女性12人(平均46歳)です。全員が日中に働いていて、たばこは吸いません。
この研究の特徴は、実験室ではなく、参加者の自宅の寝室で行われたことです。研究チームは以前、モデルハウスで1日だけ眠りを測る実験をしていました。けれども眠りは、毎日の習慣や家の環境に大きく左右されます。そこで今回は、ふだんの暮らしのなかで2週間続けて使ってもらう方法を選びました。
寝る前に3滴、10秒。あとは枕元に置くだけ
やり方はシンプルです。
- 寝る前に、紙コップへ精油を3滴(約0.06g)たらす
- 香りを10秒間吸い込む
- コップを鼻から約30cmの場所に置いて、そのまま眠る
使ったのは、香川県産ヒノキの根を洗ってチップにし、蒸気で蒸留して取り出した精油です。
この研究が比べたもの
眠りは3つの方法で記録
- ヘッドバンド型の脳波計
- 眠りはじめの脳の活動を測る(各期間の1日目・7日目・13日目を中心に)
- スマートウォッチ
- ひと晩の眠りの状態を記録する
- 毎朝の質問票
- 起きたときの眠気や、疲れの取れ具合を答える
脳波とスマートウォッチは、記録がそろった10人のデータを分析しています。
わかったこと①:7日目、眠りはじめに「深い眠りの脳波」が増えた
デルタ波は、深い眠りのときに強く出る、ゆっくりした脳波です。
研究チームは、ふとんに入ってからの20分間に注目しました。最初の10分と次の10分を比べて、デルタ波がどれだけ増えたかを見ています。
使い始めて7日目、ヒノキの根の精油を使った時期は、香りのないオイルの時期よりも、このデルタ波の増え方が大きくなっていました。起きているときに多いベータ波は、減る傾向が見られています。
眠りはじめから、すっと深い眠りへ移りやすくなっていた可能性があります。
わかったこと②:13日目、夜中に起きていた時間が約29%短く
スマートウォッチの記録では、13日目に違いが出ました。夜中に目が覚めて起きていた合計時間が、香りのないオイルの時期より約29%短くなっていたのです。
わかったこと③:朝の眠気が少なく、疲れが取れた感覚も
毎朝の質問票でも、13日目に「起きたときの眠気」と「疲労回復」の得点が、香りのないオイルの時期より良くなっていました。
機械で測った記録と、本人の実感。その両方に変化が見られたことになります。
香りの印象は「心地よく、懐かしい」
参加者は、それぞれの期間の終わりに香りの印象も答えています。ヒノキの根の精油は、香りのないオイルと比べて「リラックスできる」「心地よい」「上品」「懐かしい」「木の香りがする」といった項目で、高く評価されました。
香りの成分を調べると、いちばん多かったのはα-ピネン(36.6%)。森の香りのもとになる成分です。続いてδ-カジネン(7.7%)、γ-カジネン(7.5%)などが見つかっています。研究チームは、こうした成分が眠りの変化に関わっている可能性があると考えています。
捨てられていた根に、新しい役割
清水准教授は、ふだんの生活に近い環境で確かめられたことに意義があるとし、今後も科学的な裏づけを積み重ねて、香川県産ヒノキの根を生かした使い道を広げていきたいと述べています。研究チームは、より多くの人が参加する試験で、使い方や期間、香りの強さなどを検討していく予定です。
木や森の香りと、心の落ち着き
自然の香りが心や体によい働きをすることは、これまでもくり返し報告されてきました。ヒノキに限っても、たとえば次のような研究があります。
- 葉の精油を嗅いだ女子大学生13人で、考えごとをつかさどる脳の前頭前野の活動が静まり、体を休ませる副交感神経の働きが高まった(日本の研究、2015年)
- 幹の精油を嗅いだ人で、上の血圧(収縮期血圧)と心拍数が下がり、気分が心地よい方向へ動いた(台湾の研究、2015年)
- 65〜79歳の男女17人が、精油の香りを朝晩20秒ずつ28日間嗅いだところ、「怒り」や「落ち込み」の気分の得点が下がり、眠りの質の得点も良くなった(日本アロマ環境協会などの共同研究、2026年)
調べた相手も、測ったものもそれぞれ違いますが、木の香りが気持ちを落ち着かせる方向に働くという点は共通しています。2024年には国際的な研究チームが科学誌『Science Advances』で、においの感覚が感情やストレス、暮らしの満足度に深く関わっていることを整理し、自然の香りが人の健やかさを支える道すじを示しました。
今回の研究は、そこに「根」と「眠り」という新しい視点を加えたものです。
今日から実践できること:Zeverisからの提案
いつもの寝室に、木の香りをひとつ。
- 1. 寝る前の数分、ヒノキなど好みの木の香りを寝室に置いてみる
- 研究で使われたのは香川県産ヒノキの根の精油ですが、まずは身近なヒノキの精油や、好みの木の香りから始めてみましょう。
- 2. 精油は肌に直接つけず、枕元から少し離して使う
- 研究では、紙コップに3滴たらし、鼻から約30cmの場所に置いていました。コップや小皿、ティッシュに数滴で十分です。
- 3. 香りを「眠る前の合図」にして、毎晩同じ流れで続けてみる
- 歯を磨く、明かりを落とす、香りを置く。順番を決めておくと、体が眠る準備に入りやすくなります。
- 4. まずは2週間、続けてみる
- 研究で変化が見られたのは、使い始めて7日目と13日目でした。ひと晩で判断せず、しばらく続けてみてください。
- 5. 「心地よい」と感じる香りを選ぶ
- 参加者は、ヒノキの根の香りを「心地よく、懐かしい」と感じていました。自分が落ち着く香りかどうかを大事に。合わないと感じたら、無理に続けなくてかまいません。
まとめ
九州大学などの研究チームは、35〜60歳の日本人女性12人に、自宅の寝室でヒノキの根の精油を2週間使ってもらい、香りのないオイルを使った2週間と比べました。7日目には眠りはじめのデルタ波の増え方が大きくなり、13日目には夜中に起きていた合計時間が約29%短くなっています。朝の眠気が少なく、疲れが取れたという実感も得られました。
いつもの寝室で、なじみのある木の香りを毎晩続ける。それが、穏やかな眠りを支える助けになるのかもしれません。今夜、枕元に木の香りをひとつ置いてみませんか。
※本記事は情報提供を目的としており、医師の助言や治療に代わるものではありません。
出典
- Zennifa F, Isa A, Tomimatsu E, Xu Y, Taki R, Yasutomi H, Yasumori N, Shimizu K. “Sleep improvement by Kagawa Hinoki root volatiles in middle-aged women: a home-based pilot study.” Journal of Wood Science. 2026(オンライン公開 2026年9月1日). DOI: 10.1186/s10086-026-02296-3
https://doi.org/10.1186/s10086-026-02296-3 - 九州大学 プレスリリース「香川県産ヒノキ根精油が睡眠状態の改善に役立つ可能性」2026年9月28日
https://www.kyushu-u.ac.jp/ja/researches/view/1579
https://www.kyushu-u.ac.jp/f/67419/26_0928_04.pdf - (紹介記事)カラパイア「寝る前にヒノキの根の香りを嗅ぐと、睡眠の質が上がるとする研究結果(日本)」2026年9月29日
https://karapaia.com/archives/630367.html - (関連研究)Chen CJ, et al. “Effect of hinoki and meniki essential oils on human autonomic nervous system activity and mood states.” Natural Product Communications. 2015;10(7):1305-1308. DOI: 10.1177/1934578X1501000742
https://doi.org/10.1177/1934578X1501000742
