
3分でわかる!この記事の要点
- 結論
- 噛むことを1か月意識した人で、若い世代は前頭前野の活動が、65歳以上は記憶の成績が上向きました
- 理由
- 噛む動きが脳への刺激になり、考える・覚える働きを支えている可能性があります
- アクション
- 噛む回数を意識して食事をしましょう。まずは最初の3口からでも十分です
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「よく噛んで食べましょう」は、脳の話でもあった
「よく噛んで食べましょう」。子どものころから、何度も聞いてきた言葉です。
消化にいい、食べすぎを防げる。そんな理由で語られることの多いこの習慣ですが、脳の働きとの関係を確かめた日本の研究が、2本続けて報告されました。
明治大学と新潟大学などの研究チームによると、食事中に「噛むこと」へ意識を向ける生活を1か月続けた人たちで、次のような変化が見られました。
- 21〜31歳の41人の試験:噛む回数が増え、噛んでいるときの前頭前野の活動が高くなった
- 65歳以上の50人の試験:噛む回数が増え、記憶のテスト成績が向上した
噛むと脳の血流が増えることは、以前から知られていました。今回新しいのは、その場かぎりの変化ではなく「噛む習慣を変える」ことの効果を、無作為化比較試験(参加者をくじ引きのような方法で2つのグループに分けて比べる試験)で確かめたところです。
毎日の食事そのものが、脳を使う時間になるのかもしれません。
研究の内容:「噛むことを意識する1か月」を2つの世代で試した
共通のやり方
2つの試験は、同じ研究グループが同じやり方で行っています。
参加者を無作為に2つのグループに分けます。一方のグループは、噛む回数を計測する装着型の機器を食事中に使い、噛むことに意識を向けながら1か月を過ごします。もう一方のグループは、機器を使わずにふだん通りの食事を続けます。
そして1か月の前後で、噛む回数や脳の働きを比べました。
| 試験①(若い世代) | 試験②(65歳以上) | |
|---|---|---|
| 参加者 | 21〜31歳の41人 | 65歳以上の50人 |
| 期間 | 1か月(終了から3か月後にも噛む回数を測定) | 1か月 |
| 調べたこと | おにぎり1個あたりの噛む回数、ガムを噛んでいるときの脳の活動 | 噛む回数、記憶などのテスト成績、課題に取り組んでいるときの脳の反応 |
| 掲載誌 | Journal of Prosthodontic Research 70巻3号 | JDR Clinical & Translational Research 11巻4号 |
脳の活動は、頭の外から光を当てて血流の変化を調べる装置(fNIRS)で測っています。注目したのは、おでこの斜め上あたりにある「背外側前頭前野」。考える、注意を向ける、情報を一時的に覚えておく、といった働きに関わる領域です。
わかったこと①:若い世代では、噛んでいるときの前頭前野の活動が高くなった
21〜31歳の41人を対象にした試験では、機器を使ったグループで、おにぎり1個あたりの噛む回数が増えました。この変化は、1か月の取り組みが終わってから3か月後も続いていました。機器を使わなかったグループでは、噛む回数に変化はありませんでした。
さらに、ガムを噛んでいるときの背外側前頭前野と運動前野(体の動きの準備に関わる領域)の活動が、機器を使わなかったグループより高くなっていました。噛む回数が大きく増えた人ほど、これらの領域の活動も高いという関係も見られています。
背外側前頭前野は、考える、注意を向ける、情報を一時的に覚えておくといった、日々の仕事や勉強を支える働きに関わる領域です。食事のたびにこの領域がよく働くようになれば、噛む時間が、毎日くり返される「脳の軽い運動」のような役割を果たす可能性があります。実際に、次に紹介する65歳以上の試験では、同じ習慣づけで記憶のテスト成績が向上していました。
1か月の意識づけで身についた「噛む習慣」が、機器を外したあとも残っていた。続けやすさという点でも、うれしい結果です。
わかったこと②:65歳以上では、記憶のテスト成績が向上した
65歳以上の50人を対象にした試験では、機器を使ったグループで噛む回数が増え、記憶のテスト成績が向上しました。
こちらの試験では、記憶の課題に取り組んでいるときの脳の反応も調べています。機器を使ったグループでは、左の背外側前頭前野の反応が、使わなかったグループとくらべて小さくなっていました。成績は上がり、脳の反応は小さくなる。研究チームはこれを、より少ない力で課題をこなせるようになった「脳の効率のよさ」の表れである可能性があると考えています。
また、噛む回数が多い人ほど、注意をコントロールする力を調べる検査(ストループ検査)の成績が高い傾向も見られました。
2つの試験は、測ったものが違います
同じ「背外側前頭前野」という言葉が出てきますが、2つの試験で測った場面は異なります。
- 試験①(若い世代):ガムを噛んでいる最中の脳の活動
- 試験②(65歳以上):記憶の課題に取り組んでいる最中の脳の反応と、テストの成績
若い世代の試験が示したのは「噛んでいるときに脳がよく働くようになった」こと。65歳以上の試験が示したのは「記憶の成績が伸びた」ことです。それぞれ別の角度から、噛む習慣と脳のつながりを照らしています。
なぜ噛むことが脳に関わるの?
あごを動かして噛むとき、口の中やあごの筋肉からはたくさんの信号が脳に送られます。これまでの研究で、ガムを噛むと前頭前野の血流が一時的に増えることがわかっていました。
今回の2つの試験は、その一歩先を確かめたものです。食事のたびに噛むことへ意識を向ける。その積み重ねが、噛んでいるときの脳の働き方や、記憶の成績と結びついている可能性が出てきました。
研究チームは、噛む習慣づくりを、薬を使わず負担も少ない方法として挙げ、より長い期間での研究を進める必要があるとしています。
今日から実践できること:Zeverisからの提案
- 1. 最初の3口だけ、噛む回数を数えてみる
- 食事の間じゅう数え続ける必要はありません。最初の3口だけ「いま何回噛んだかな」と数えてみましょう。自分のふだんの回数を知ることが、最初の一歩です。
- 2. 食事中はスマホを置き、食感に意識を向ける
- 画面を見ながらだと、噛むことから意識が離れがちです。スマホを少し離れた場所に置き、歯ごたえや味の変化を感じてみましょう。
- 3. 歯ごたえのある食材を一品足す
- れんこん、ごぼう、きのこ、海藻、玄米など。自然と噛む回数が増える食材を、いつもの献立にひとつ加えます。野菜を少し大きめに切るのも手軽な工夫です。
- 4. 一口ごとに、箸を置く
- 口に入れたら箸を置き、飲み込んでから次の一口へ。噛むための時間が自然に生まれます。
- 5. 歯やあごに不安のある方は、無理のない硬さで
- 入れ歯や治療中の歯がある方、飲み込みに不安のある方は、硬いものにこだわらず、やわらかめの食材をゆっくり味わう形で大丈夫です。気になることは歯科で相談しましょう。
まとめ
明治大学と新潟大学などの研究チームは、食事中に噛むことへ意識を向ける1か月の取り組みを、2つの世代で確かめました。21〜31歳の41人の試験では、噛む回数が増え、噛んでいるときの背外側前頭前野の活動が高くなりました。65歳以上の50人の試験では、噛む回数が増え、記憶のテスト成績が向上しています。
特別な道具も、特別な食材もいりません。今日の最初の3口を、少しだけていねいに噛んでみませんか。
※本記事は情報提供を目的としており、医師の助言や治療に代わるものではありません。
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zeveris出典
- Miyazaki Y, Ono Y, Suzuki T, Hasegawa Y, Yoshimura S, Sta. Maria MT, Hori K, Yamamura K, Ono T. “Habitual attentional mastication boosts prefrontal activity during chewing: A randomized trial.” Journal of Prosthodontic Research. 2026;70(3):517-524(早期公開 2026年1月5日). DOI: 10.2186/jpr.JPR_D_25_00084
J-STAGEで論文を見る - Sta. Maria MT, Hasegawa Y, Yoshimura S, Suzuki T, Ono Y, Sakata M, Shiramizu M, Hori K, Yamamura K, Ono T. “Impact of Chewing Behavior Change on Cognition and Cerebral Hemodynamics.” JDR Clinical & Translational Research. 2026;11(4):593-604(オンライン公開 2025年11月26日). DOI: 10.1177/23800844251388317
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