8週間のボランティアで、心の健康と「生きる意味」の実感が高まった―香港の55歳以上198人、9か月後まで

3分でわかる!この記事の要点

結論
8週間のボランティアに参加した55歳以上は、心の健康と生きる意味の実感が高まり、9か月後も続きました
理由
誰かの役に立つ経験が「自分にもできる」という感覚を育て、心の健康につながると考えられます
アクション
地域の清掃やイベントの手伝いなど、1回きり・短時間の活動から気軽に試してみましょう
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「誰かのため」の時間は、自分の心にも返ってくる?

地域の清掃、子ども食堂の手伝い、イベントの受付。ボランティアは「人のためにすること」というイメージがあります。

けれど、ボランティアをする人自身の心にも良い変化が見られることは、これまでも繰り返し報告されてきました。では、実際にボランティアを始めてもらうと、心はどう変わるのでしょうか。

日本と同じように高齢化が進む香港で、この問いを確かめる試験が行われました。華南師範大学(中国)の研究チームによると、8週間のボランティアのプログラムに参加した55歳以上の人たちは、心の健康や「生きる意味」の実感が高まり、その変化は9か月後まで続いていました。結果は2026年10月、米国心理学会の学術誌『Psychological Services』に掲載されています。

この記事では、試験がどう進められ、何がわかったのかを順に見ていきます。

研究の内容:198人が3つのグループに分かれた

誰が参加したか

参加したのは、香港の地域で暮らす55歳以上の198人です。参加者は、次の3つのグループにランダムに分かれました。

  • ボランティアのプログラムに参加するグループ
  • 別の活動に取り組むグループ
  • 特別な活動をしないグループ

比べるグループを2種類置くと、「何か活動をしたこと」による変化と、「ボランティアをしたこと」による変化を、分けて見やすくなります。

どんなプログラムだったか

ボランティアのグループは、まず2週間の準備研修を受けました。そのあと8週間、あらかじめ組まれたボランティア活動に取り組んでいます。

プログラムの土台になっているのは、行動を始めて続けるための考え方(ヘルス・アクション・プロセス・アプローチ)です。この考え方では、「やってみたい」と思う段階と、実際に動いて続ける段階を分けてとらえます。気持ちはあっても、行動に移せないことは少なくありません。そこで、具体的な計画を立てることと、「自分にもできる」という感覚を育てることが大切にされます。

いきなり現場に出るのではなく、準備の期間を置いてから活動に入る。プログラムはそんな組み立てになっていました。

何を調べたか

心の状態は、開始前と、3か月後・6か月後・9か月後の4回、質問票で調べられました。調べたのは次の5つです。

  • 心の健康:世界保健機関(WHO)の5つの質問。最近2週間、明るく楽しい気分で過ごせたか、ぐっすり休めたか、などを尋ねます
  • 「自分にもできる」という感覚(自己効力感):難しいことがあっても、自分で対処できると思えるか
  • 生きる意味の実感:自分の人生に意味や目的を感じているか
  • 孤独感:人とのつながりが足りないと感じることがあるか
  • 人のために行動しようとする気持ち:困っている人を助けたい、分かち合いたいという気持ち

わかったこと

①5つの面すべてで、良い変化が見られた

ボランティアのグループは、比べるための2つのグループのどちらと比べても、5つの面すべてで大きく良くなっていました。

別の活動に取り組んだグループと比べても差が出ていたことになります。何かの活動に参加したというだけではなく、ボランティアという活動の中身が、変化を後押ししていた可能性があります。

②変化は9か月後まで続いた

プログラムの期間は8週間でしたが、こうした変化は9か月後の調査でも保たれていました。プログラムをきっかけに生まれた変化が、その後も続いていたことになります。

③カギは「自分にもできる」という感覚

研究チームは、ボランティアがなぜ心の健康につながるのかも調べています。カギになっていたのは、「自分にもできる」という感覚でした。

ボランティアのグループで心の健康が良くなったことは、「自分にもできる」という感覚が高まったことで説明できました。さらに、次のような流れも確かめられています。

  1. ボランティアをする
  2. 生きる意味を感じる
  3. 「自分にもできる」という感覚が育つ
  4. 心の健康が良くなる

誰かの役に立てたという手ごたえが、自分への信頼を静かに積み上げていくのかもしれません。

研究チームは、参加しやすいボランティアの機会を地域の取り組みに組み込むことが、心の健康を保ち、孤独をやわらげる助けになるとしています。

同じ研究チームの別の調査:孤独を感じている人ほど、変化が大きかった

同じ研究チームは、2026年6月にも、香港でのボランティアについての調査を発表しています(学術誌『Journal of Aging & Social Policy』)。今回の試験とは別の人たちを、別の方法で調べたものです。

香港政府は2023年、地域の支え合いを担うボランティアを募って研修する制度を始めました。調査では、この制度でボランティアをしている55〜79歳の67人と、していない108人を、開始時、3か月後、8か月後の3回、比べています。

ボランティアをしている人は、していない人に比べて、心の健康などが良くなっていました。なかでも、もともと孤独感が強い人や、落ち込みから立ち直る力が弱いと感じていた人ほど、変化が大きいという結果でした。

こちらは自分の意思で参加した人を追いかけた調査で、ランダムにグループを分けた今回の試験とは進め方が違います。それでも、「人とのつながりが足りない」と感じている人にこそ、ボランティアが力になる可能性を示しています。

今日から実践できること:Zeverisからの提案

1. まずは1回きり、短時間の活動から
地域の清掃、お祭りやスポーツ大会の手伝い、募金活動など、その日だけ参加できるものから始めてみましょう。香港の試験でも、活動の前に準備の期間が設けられていました。
2. お住まいの地域の窓口で探す
市区町村の社会福祉協議会にあるボランティアセンターや、自治体の広報、地域の掲示板には、身近な募集が載っています。
3. 「いつ・どこで・何を」を先に決める
「来月の第2土曜、午前中に、公園の清掃に参加する」。気持ちを行動に移すには、具体的な計画が助けになります。カレンダーに書き込むところまでやってみましょう。
4. 得意なことを生かす
読み聞かせ、学習支援、料理、パソコン作業。仕事や趣味で身につけたことが役に立つと、「自分にもできる」という感覚を得やすくなります。
5. 「役に立てた」と感じた場面を、ひとつ覚えておく
「助かったよ」と言われた、最後までやり遂げた。活動のあとに、うれしかった場面をひとつ思い返してみてください。試験でカギになっていたのは、この手ごたえでした。
6. 誰かと一緒に、仲間ができる場へ
友人や家族を誘って参加する、同じメンバーで続く活動を選ぶ。人とのつながりも、ボランティアがもたらすもののひとつです。
7. 無理のない範囲で、楽しめるものを
ボランティアは義務ではありません。続けたいと思えるものを、自分のペースで選びましょう。

まとめ

香港の55歳以上198人が参加した試験では、2週間の研修と8週間のボランティア活動に取り組んだ人たちの、心の健康、「自分にもできる」という感覚、生きる意味の実感、孤独感などが良くなり、9か月後まで続いていました。別の活動に取り組んだグループと比べても、差が見られています。

カギになっていたのは、「自分にもできる」という感覚です。人のために使う時間は、自分への信頼を育てる時間でもあります。まずは近所の小さな活動から、のぞいてみませんか。

※本記事は情報提供を目的としており、医師の助言や治療に代わるものではありません。

出典

  • Man NK, Chan SW. “Promoting psychological well-being in older adults through volunteering: A randomized controlled trial study in Hong Kong.” Psychological Services. 2026年10月オンライン公開. DOI: 10.1037/ser0001085
    https://doi.org/10.1037/ser0001085
  • Man NK, Chan SW, Chen J. “The Relationship of Volunteering to the Psychological Well-Being of Older Adults in a Community-Based Setting: A Three-Wave Longitudinal Study in Hong Kong.” Journal of Aging & Social Policy. 2026年6月オンライン公開. DOI: 10.1080/08959420.2026.2680901
    https://doi.org/10.1080/08959420.2026.2680901

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