眠りは「長さ」だけでなく「中身」も。レム睡眠が多い人ほど、83の病気のリスクが低い傾向

3分でわかる!この記事の要点

結論
9万5,559人の眠りを手首の活動量計で推定し、約9年追跡した研究で、レム睡眠が多い人ほど83の病気で発症リスクが低い傾向が見られました
注意
観察研究のため、眠りが病気を防ぐという因果関係は示されていません。病気の前段階が眠りに影響していた可能性も残ります
アクション
レム睡眠は夜の後半に多く現れます。まずは睡眠時間を削らないこと、寝る前の深酒を避けることから
目次[閉じる]

「何時間眠ったか」の次にある、眠りの「中身」

「昨日は6時間眠れた」「今週は寝不足だ」。睡眠時間は気にしても、眠りの中身まで意識する人は少ないかもしれません。

眠りは一様ではありません。浅い睡眠や深い睡眠からなる「ノンレム睡眠」と、夢を多く見る「レム睡眠」が、およそ90分の周期で一晩に何度かくり返されています。

この眠りの段階と、その後の病気のなりやすさとの関係を、これまでにない規模で調べた研究が、2026年9月17日に医学誌『PLOS Medicine』に掲載されました。中国の首都医科大学と北京大学の研究チームによるものです。

この研究は観察研究です。眠りと病気の「関係」を調べたもので、眠りが病気を防ぐという因果関係を示したものではありません。

9万5,559人の眠りを推定し、約9年追跡

データ
英国の大規模研究「UK Biobank」。2013〜2015年に、参加者が利き手の手首に活動量計を7日間着けて過ごしたデータ
眠りの推定
手首の動きから、深層学習(AI)でレム睡眠・深い睡眠・浅い睡眠の長さ、睡眠時間、夜中に目が覚めている時間などを推定。推定の仕組みは、睡眠検査(脳波などを測る終夜の検査)と同時に記録した1,100夜以上のデータで学習させたもの
対象
9万5,559人(平均56.2歳)
追跡
約9年(中央値8.9年)。入院記録にもとづき1,049種類の病気の発症を追跡
調整
年齢、性別、喫煙、飲酒、運動量、体格(BMI)、居住環境など

参加者のレム睡眠の長さは、中央値で1日(正午から翌日正午まで)あたり約82分でした。

わかったこと

レム睡眠が多い人ほど、83の病気でリスクが低い傾向

レム睡眠が多い人ほど、12の分野にわたる83の病気で、発症リスクが低い傾向が見られました。心不全、低血圧、心房細動、虚血性心疾患、パーキンソン症候群、多発性硬化症、認知症、アルツハイマー病などです。

レム睡眠が少なめの人と多めの人(参加者を並べたときの下から4分の1と上から4分の1、差は約48分)を比べると、次のような関係でした。

病気 レム睡眠が多めの人のリスク
心不全 約0.74倍(約26%低い)
認知症 約0.54倍(約46%低い)

深い睡眠が多い人では、7つの病気でリスクが低い傾向

深い睡眠が多い人では、2型糖尿病、うつ病、睡眠時無呼吸、パーキンソン病など7つの病気で、リスクが低い傾向が見られました。

睡眠時間は「6〜8時間」でリスクが最も低い病気が多かった

睡眠時間とリスクが直線ではなく曲線的な関係を示した86の病気のうち、69の病気で、リスクが最も低くなるのは6〜8時間の範囲でした。

6〜8時間の人と比べると、5時間未満の人では37の病気でリスクが高くなっていました。一方、8時間を超える人でリスクが高かったのはほぼうつ病に限られ、著者らは、眠りすぎがうつ病の前ぶれや症状として現れている可能性も指摘しています。

Zeverisでは以前、同じUK Biobankのデータを使った別の研究を紹介しました。約50万人が自分で答えた睡眠時間と、脳や心臓など体の臓器の「老化の速さ」との関係を調べたもので、1日6.4〜7.8時間の人で老化が最も緩やかな傾向でした。

睡眠の「スイートスポット」――1日6.4〜7.8時間で体の老化が最も緩やかに

今回の研究とは、睡眠の測り方(自己申告と活動量計)も、比べたもの(老化の速さと病気の発症)も違います。それでも、短すぎず長すぎない中くらいの睡眠時間で好ましい結果が見られた点は共通しています。ただし、今回の参加者は同じUK Biobankの一部なので、独立した2つの研究で確かめられたわけではありません。また、自己申告と活動量計では睡眠時間の出方が違うため、「6.4〜7.8時間」と「6〜8時間」をそのまま比べることはできません。

眠りの「乱れ」も関係していた

日によって睡眠時間がばらつく人では不安症やうつ病など3つの病気で、夜中に目が覚めている時間が長い人では6つの病気で、リスクが高い傾向が見られました。

読むときの注意

観察研究です。眠りが病気を防ぐという因果関係を示したものではありません。調整しきれない別の要因が関わっている可能性も残ります。

  • 病気の前段階が、先に眠りを変えていた可能性があります。測定から2年以内に発症した人を除いて分析し直すと、見つかった関係のうち残ったのは約6割(156のうち95)でした
  • 睡眠の段階は、脳波ではなく手首の動きから推定したものです。睡眠検査と比べると、レム睡眠は平均で約17分短く、睡眠時間は約48分長く推定される傾向がありました。著者らも「動きにもとづく推定値」として読むよう求めています。6〜8時間という数字も、この推定にもとづくものです
  • 眠りを測ったのは1週間だけです。病気は入院記録から数えており、通院だけで済んだケースは含まれていません
  • 参加者の約97%が白人で、UK Biobankは健康意識の高い人が集まりやすいことも知られています。日本人にそのまま当てはまるかは分かりません
  • 睡眠の悩みが続くときや、いびき・日中の強い眠気が気になるときは、医師に相談してください

レム睡眠を削らないために(提案)

ここからは今回の研究ではなく、これまでの睡眠研究で知られていることにもとづく提案です。「レム睡眠を増やす方法」として確かめられたものではなく、実践すれば病気のリスクが下がると示されたわけでもありません。レム睡眠を「削らない」「妨げない」ための入口として読んでください。

1. 睡眠時間を確保する
レム睡眠は夜の後半に多く現れます。そのため、睡眠時間が短くなると、削られやすいのはレム睡眠です。まずは睡眠時間を確保することが基本になります。
2. 寝る前のお酒を控えめにする
寝る前のお酒は寝つきを早める一方で、どの量でも最初のレム睡眠が始まるのを遅らせることが、複数の研究をまとめたレビューで報告されています。中程度以上の量では一晩のレム睡眠が減り、夜の後半の眠りが乱れやすくなることも示されています。なお、少量では一晩のレム睡眠の減少ははっきりしていません。
3. 活動量計の「レム睡眠の分数」に一喜一憂しない
手首型の機器によるレム睡眠の数字は推定値で、今回の研究でも睡眠検査とのずれがありました。1晩ごとの数字よりも、睡眠時間が確保できているか、寝る時間が日によって大きくばらついていないかといった、長めの傾向を見るほうが手がかりになります。

まとめ

9万5,559人の眠りを約9年追った今回の研究では、レム睡眠が多い人ほど83の病気で、深い睡眠が多い人ほど7つの病気で、発症リスクが低い傾向が見られました。睡眠時間は、多くの病気で6〜8時間のときにリスクが最も低くなっていました。

一方で、これは観察研究で、眠りの段階も手首の動きからの推定です。因果関係はまだ分かりません。それでも、「何時間眠ったか」に加えて、眠りの中身にも目を向けるきっかけにはなりそうです。まずは、夜の後半の眠りを削らないところから始めてみてはいかがでしょうか。

※本記事は情報提供を目的としており、医師の助言や治療に代わるものではありません。

出典

  • Luo J, Liu R, Yin J, Cao W, Sun S, Chen R. “Accelerometer-derived real-world sleep stages and risk of incident diseases: A UK Biobank cohort study and phenome-wide association analysis.” PLOS Medicine 23(9): e1005213(2026年9月17日)DOI: 10.1371/journal.pmed.1005213
    https://doi.org/10.1371/journal.pmed.1005213
  • Ebrahim IO, Shapiro CM, Williams AJ, Fenwick PB. “Alcohol and Sleep I: Effects on Normal Sleep.” Alcoholism: Clinical and Experimental Research 37(4): 539–549(2013年)DOI: 10.1111/acer.12006
    https://doi.org/10.1111/acer.12006

関連記事

睡眠の「スイートスポット」――1日6.4〜7.8時間で体の老化が最も緩やかに(UK Biobank・約50万人、Nature)

この記事をシェアする

記事一覧へ戻る

関連記事 Relation Entry