強みに気づく8回の練習、6か月後も残っていたもの。スイスとイタリアで確かめた研究

3分でわかる!この記事の要点

結論
強み×マインドフルネスの8回のプログラムで、強み10項目の改善が6か月後も続いたと報告されています
理由
ウェルビーイングの変化には、「自分で選んで行動している」感覚(自律性)の充足が関わっていたと分析されました
アクション
8回のテーマを一人用に置き換えた入口で、まず自分の強みに気づくところから
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自分の強みを知ることは、なぜ「自分らしく生きる」手がかりになるのか

「自分らしく生きたい」「自分にしかできない役割を見つけたい」。そう思っても、何から手をつければよいのか分からないことは少なくありません。そんなとき、ひとつの手がかりになるといわれているのが、自分の「強み」を知ることです。

ここでいう強みとは、仕事の技能や資格のことではありません。心理学の分野では、PetersonとSeligmanが整理した「24の性格の強み(キャラクター・ストレングス)」がよく知られています。たとえば好奇心、思いやり、忍耐力といった、その人の考え方やふるまいに表れる良い性質のことです。現在はVIA研究所が、この強みの分類や測定ツールを広く提供しています。

使命感や生きがいといった大きなテーマも、まずは足元にある自分の性質に目を向けるところから始まる、という考え方があります。

この「強み」と、今この瞬間に注意を向ける「マインドフルネス」を組み合わせたプログラムに、MBSP(マインドフルネス・ベースの強みの実践)があります。2026年8月、学術誌『Journal of Happiness Studies』に、スイスとイタリアの研究チームがこのMBSPを2つの国で確かめた論文をオンラインで公開しました。MBSPはこれまでにも研究されてきたプログラムで、今回は2つの国の参加者で確かめた研究という位置づけです。

スイス42人、イタリア53人。2つの研究でわかったこと

研究は2つあります。スイスでは42人、イタリアでは53人が参加しました。どちらの研究でも、参加者を「プログラムを受けるグループ」と「順番待ちのグループ」に無作為に分けて比べています(ランダム化比較試験)。イタリアの研究は、あらかじめ研究計画を登録したうえで行われました。

少し補足します。ランダム化比較試験とは、参加者をくじ引きのように無作為に振り分けて、グループ同士を比べる方法です。振り分けを人が決めないので、「もともと前向きな人ばかりがプログラム側に集まった」といった偏りが入りにくくなります。

比べているのは、「プログラムを受けた人」と「まだ受けていない順番待ちの人」です。瞑想そのものや、強みを知ることだけを単独で比べたわけではありません。あくまで、8回のプログラムをひとまとまりとして受けた場合の結果です。

また、イタリアの研究で行われた「事前登録」とは、何をどう調べるかを、結果が出る前に公開しておくことです。結果を見てから都合のよい分析だけを選ぶ、ということを防ぐための仕組みです。

結果は次のとおりです。

  • 24の性格の強みのうち10項目で、プログラム終了から6か月後も改善が続いていたと報告されています
  • マインドフルネス全体の向上は、3か月後まで続いていたという結果でした
  • ウェルビーイング(心の健やかさ)の変化には、「基本的な心理的欲求」の充足、とくに「自律性」、つまり「自分で選んで行動している」という感覚の充足が関わっていたと分析されました

1つ目の結果は、24の強みすべてではなく、そのうち10項目についてのものです。残りの項目について、6か月後まで改善が続いたとは報告されていません。

6か月後も改善が続いていた10の強み

6か月後まで改善が続いていたのは、次の10項目です。説明は、VIA研究所の「24の性格の強み」の考え方をもとに、簡単にまとめたものです。

強み どんな力か
美の鑑賞 自然や芸術、人のすぐれた行いなど、身の回りの美しさや素晴らしさに気づき、心を動かされる力
勇気 怖さや困難があっても、正しいと思うことに向かって行動する力
感謝 日々のよい出来事や人からの親切に気づき、ありがたく感じ、それを伝える力
希望 よい未来を思い描き、そこに向けて自分で動けると信じる力
ユーモア 笑いを楽しみ、周りの人にも笑顔をもたらす力
親切 見返りを求めずに、人のために何かをしようとする力
愛 身近な人との親しい関係を大切にし、互いに思いやる力
社会的知性 自分や相手の気持ちに気づき、その場に合ったふるまいができる力
精神性 自分より大きなものとのつながりや、人生の意味・目的を感じる力
熱意 物事に活力をもって、生き生きと取り組む力

3つ目の結果は、ウェルビーイングの変化に、どのような心理的な道筋が関わっているのかを調べた分析です。自分の強みに気づき、それを意識して過ごすことが、「やらされている」ではなく「自分で選んでいる」という感覚とつながっていた。そう読める結果ですが、参加者が少ないことなどから、著者ら自身も予備的・探索的な結果として慎重に解釈すべきとしています。誰にでも同じ道筋が当てはまると示されたわけではありません。

MBSPの8回の流れ

MBSPは、グループで8回にわたって行うプログラムです。考案者はVIA研究所のライアン・ニーミック氏で、2014年に出版された著書で紹介されています。

各回は、瞑想、話し合い、新しい内容の学習、体験型の練習、振り返り、宿題などを組み合わせて進めます。MBSPでは、マインドフルネスと「キャラクター・ストレングス(性格の強み)」を組み合わせながら、自分の考え方や行動、人との関わり方を見つめていきます。

一般的な8回の流れは、次のように整理できます。

回 テーマ 内容
1 自動操縦の心に気づく レーズン1粒をじっくり味わうなどの練習を通じて、普段どれだけ無意識に過ごしているかに気づきます
2 自分の代表的な強みを知る 「最高の自分だった場面」を振り返り、そのときに発揮していた強みを見つけます
3 障害を機会としてとらえる 「彫像の瞑想」などを通じて、練習を妨げるものに気づき、それを別の視点から捉える練習をします
4 日常でのマインドフルネス 「歩く瞑想」などを行い、日常生活の中でも自分の内側にある良い資質や強みに目を向けます
5 人間関係を大切にする 自分や他者への思いやりに意識を向ける練習や、人との関係の中で発揮している自分の強みを考える練習を行います
6 強みの「ちょうどよさ」に気づく 強みは、使いすぎても、使わなさすぎても問題になることがあります。他者から自分の強みについて聞く練習などを通じて、強みの使い方を考えます
7 自分らしさと目標 「最高の未来の自分」を思い描く練習を行い、自分の強みや価値観に沿った目標を考えます
8 人生との関わり方 これまでの学びを振り返り、自分にとって大切なものや強みに気づき、それらを今後の生活にどう生かすかを考えます

読むときの注意

  • 参加者はスイス42人、イタリア53人と多くありません
  • 2つ目の研究でプログラムを最後まで完了した人は39%でした。6割ほどの人は最後まで続けられなかったことになります。途中で離れた人が多いと、続けられた人に偏った結果になる可能性があります
  • 大きな効果でなければ検出できない規模の研究です。小さな変化は、あっても見逃されている可能性があります。結果は今後の研究とあわせて慎重に受け止める必要があります

ここではMBSPを心の不調の治療法として紹介しているわけではありません。気分の落ち込みやつらさが続く場合は、一人で抱え込まず、医師やカウンセラーなどの専門家に相談してください

今日から試せる8つの入口(提案)

以下は、MBSPの8回それぞれのテーマを、一人でも取り入れやすい形に置き換えた提案です。

研究で効果が確かめられたのは、グループで行う8回のプログラム全体です。ここに挙げた一人での取り組みを確かめたわけではなく、一人で試して同じ効果が出るとは限りません。

自分の強みに「まず気づくため」の入口として、1つずつ、自分のペースで試してみてください。なお、プログラムの中で行う瞑想の具体的なやり方は、ここでは扱っていません。

問いの例は、考えるきっかけとして用意したものです。すべてに答える必要はありません。

1. 一粒をじっくり味わう

第1回:自動操縦の心に気づく

普段口にしている食べ物を、急がずに味わってみます。ふだん無意識に過ごしている時間があることに気づくきっかけになるかもしれません。

問いの例
「今日、味わわずに済ませてしまったことは何だっただろう」

2. 「最高の自分だった場面」を書き出す

第2回:自分の代表的な強みを知る

「あのときの自分はよかった」と思える場面を一つ思い出して書き出し、そのとき使っていた強みを探します。VIA研究所のサイトでは、強みを知るための質問票「VIAサーベイ」を無料で受けられ、日本語にも対応しています。結果は答えではなく、振り返るための材料として眺めてみてください。

問いの例
「その場面で、自分は何を大事にしていただろう」「無理をせず自然にできていたことは何だろう」

3. 続けにくさに気づく

第3回:障害を機会としてとらえる

練習を続けるうえで邪魔になっているものがあれば、それに気づき、別の見方ができないか考えてみます。あわせて、日常の小さな瞬間を一つ味わってみます。

問いの例
「何が練習の邪魔をしているだろう」「今日、少しでも味わえた瞬間はどこだっただろう」

4. 日常の中で、自分の良い資質に目を向ける

第4回:日常でのマインドフルネス

歩いているときや、いつもの用事の途中など、特別ではない場面で、自分の内側にある良い資質に目を向けてみます。

問いの例
「今日の自分のふるまいで、よかったところはどこだろう」

5. 身近な人との関わりに目を向ける

第5回:人間関係を大切にする

MBSPでは、この回に自分や他者への思いやりに意識を向ける練習と、人との関係の中で発揮している強みを考える練習を行います。一人で取り入れるなら、身近な人への思いやりに意識を向け、その人との関わりの中で自分や相手の強みに目を向けてみるのが入口になりそうです。

問いの例
「あの人のどんなところに助けられているだろう」「その人と関わるとき、自分はどんな強みを使っているだろう」

6. 周りの人に、自分の強みを聞いてみる

第6回:強みの「ちょうどよさ」に気づく

家族や友人に、自分の強みは何だと思うか聞いてみます。自分では当たり前だと思っていることが、周りからは強みに見えていることもあります。また、強みは使いすぎても使わなさすぎても問題になりうるものです。うまくいかないことがあったときは、強みの使い方という視点から捉え直してみます。

聞き方の例
「私のいいところって、どこだと思う?」
問いの例
「この強みを、今は使いすぎていないか。使わなさすぎていないか」

7. 「最高の未来の自分」を思い描く

第7回:自分らしさと目標

これから先の「最高の自分」を思い描き、そこから自分らしい目標を一つ立ててみます。

問いの例
「物事がうまく運んだとしたら、そのときの自分はどんな毎日を送っているだろう」

8. ここまでを振り返る

第8回:人生との関わり方

1〜7で気づいたことの中から大切なものを拾い上げ、自分のいちばん強い部分を書き留めておきます。それを今後の生活にどう生かすかも、あわせて考えてみます。

問いの例
「この中で、これからも大切にしたいことは何だろう」

まとめ

自分らしさや使命感は、一度に見つかるものではないのかもしれません。今回の研究は、自分の強みに気づき、それを意識しながら今この瞬間に目を向けるプログラムについて、スイスとイタリアで調べたものでした。強みの10項目の改善は6か月後も続き、ウェルビーイングの変化には「自分で選んで行動している」という感覚の充足が関わっていたと分析されています。

一方で、参加者は少なく、2つ目の研究の完了率は39%でした。強みを知ることは、答えを出すことではなく、自分を見つめ直すための一つの入口です。気が向いたときに、ご自身の「よかった場面」を一つ思い出してみるところから始めてみてもよいかもしれません。

※本記事は情報提供を目的としており、医師の助言や治療に代わるものではありません。

出典

  • Casali N, Meneghetti C, Hirschi A, Pang D. “Satisfying Basic Needs: The Effectiveness of Mindfulness-Based Strengths Practice on Character Strengths, Mindfulness, and Well-being Across Two Samples.” Journal of Happiness Studies(2026年8月19日オンライン公開)DOI: 10.1007/s10902-026-01089-1
    https://doi.org/10.1007/s10902-026-01089-1
  • Niemiec RM.『Mindfulness and Character Strengths: A Practical Guide to Flourishing』Hogrefe(2014)
  • Prasath PR, Morris C, Maccombs S. Journal of Counselor Practice 12(1): 1-22(2021)DOI: 10.22229/asy1212021
    https://doi.org/10.22229/asy1212021
  • VIA Institute on Character
    https://www.viacharacter.org/

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