腸内細菌が野菜由来の成分から「DNIC」を生み出す――血圧・血糖・肝臓にも関わる”保護分子”の新たな仕組み

3分でわかる!この記事の要点

結論

腸内細菌が、野菜の硝酸塩と非ヘム鉄を、体を守る分子「DNIC」に変えることがわかった

理由

腸内細菌がいない無菌マウスでは、この分子がまったく作られなかったため

アクション

野菜だけでなく、食物繊維や発酵食品などバランスのよい食生活も意識してみる

野菜由来の成分を「保護分子」に変えるカギは腸内細菌にあった

スウェーデンのカロリンスカ研究所が、ドイツのハンブルク・エッペンドルフ大学医療センター、マインツ大学(ヨハネス・グーテンベルク大学)医療センターと共同で行った研究が、2026年8月19日、医学誌『Cell』のオンライン版に発表されました。査読を経て掲載された論文であり、プレプリント(査読前論文)ではありません。

野菜などの食事由来の硝酸塩と非ヘム鉄(赤身肉などに含まれる「ヘム鉄」に対し、植物性食品などに含まれる鉄分のことです)が、腸内細菌によってDNICへと変換される仕組みについては、これまで十分に明らかになっていませんでした。今回の研究では、マウス・培養細胞・細菌・ヒトのサンプルを用いた一連の実験により、腸内細菌がこれらの成分を「ジニトロシル鉄錯体(DNIC)」という分子に変換していることが明らかになりました。

DNICは肝臓や腎臓などに運ばれ、心血管・代謝系に保護的に働く可能性が示されています。

 

無菌マウスでの実験

とくに注目されるのは、腸内に細菌を持たない「無菌マウス」を使った実験です。無菌マウスでは、このDNICという分子がまったく作られていませんでした。つまり、野菜に含まれる硝酸塩や非ヘム鉄をDNICに変えるには、腸内細菌の存在が欠かせないことが示されたのです。

研究チームのAndrei L. Kleschyov氏(シニアリサーチャー)は、「腸内細菌が食事由来の成分を、生理機能に影響を与える分子へと変換していることを示す結果だ」と述べています。また、Mattias Carlström教授は、「野菜を多く摂る食生活が、さまざまな疾患のリスク低下と関連づけられてきた理由の一端を説明するものだ」とコメントしています。

何を、どうやって調べたのか

研究チームは、マウスを用いた実験で、腸内細菌を持つ通常のマウスと、腸内細菌を持たない無菌マウスとを比較しました。あわせて、培養細胞や細菌を使った実験、さらにヒトのサンプルを用いた分析も行い、DNICが体内でどのように作られ、運ばれるのかを調べています。

DNICのレベルが高いマウスほど、次のような関連が見られました

 

血圧

血圧が低い方向の関連

 

血管

血管の機能が良好になる方向の関連

 

血糖

血糖をコントロールしやすくなる方向の関連

 

肝臓

肝臓への脂肪蓄積が少なくなる方向の関連

全体として: 心血管・代謝系の健康を保つ方向に働く可能性

 

【重要な注意点】

ここで注意したいのは、これらの血圧・血糖・肝脂肪に関する詳しい結果は、主にマウスを用いた実験で観察されたものだという点です。ヒトのサンプルはDNICという分子の存在や特徴を確認するために使われていますが、公開されている情報の範囲では、ヒトを対象にした人数や具体的な検証内容までは明らかにされていません。

研究者自身も、「今回の研究の多くは実験モデルに基づくものであり、ヒトにおける詳しいプロセスを解明するには、さらなる研究が必要だ」と述べています。次の段階として、ヒトでDNICを測定する方法の開発や、DNICがどのように作られ、運ばれ、体にどう影響するのかを調べる研究が計画されているとのことです。

そのため、現時点では「野菜を食べれば血圧や血糖、肝脂肪が改善する」と言い切ることはできません。あくまで、マウスを用いた実験で観察された関連であり、腸内細菌が野菜由来の成分を保護的な分子に変えるという新しい仕組みが見つかった、という段階の知見です。

今日から実践できる対策(提案)

ここから先は、今回の研究で直接効果が検証された治療法や介入ではなく、研究結果をふまえた提案です。今回の研究だけから、どのくらいの量の野菜を摂ればよいか、あるいはどのような腸内環境が望ましいかまでは判断できません。

 

硝酸塩と非ヘム鉄の両方を意識してみる

ほうれん草やビーツなどには硝酸塩が、豆類・全粒穀物・緑黄色野菜などには非ヘム鉄が多く含まれるとされています。こうした食品を含めてバランスよく食事に取り入れてみる

(これは今回の研究が直接検証した方法ではなく、一般的な栄養知識をふまえた提案です)

 

食物繊維や発酵食品も含める

食物繊維や発酵食品などを含め、バランスのよい食生活を心がける

「特定の食品で善玉菌を増やせばDNICが増える」ことが確認されたわけではありません。あくまで一般的な食生活の工夫として

 

特定の食品や成分だけに偏らない

今回の研究はDNICという一つの仕組みに着目したものであり、健康は食生活全体のバランスによって支えられていることを踏まえておく

まとめ

 

カロリンスカ研究所などの研究チームが、腸内細菌が野菜由来の硝酸塩と非ヘム鉄を、体を守るとされる分子「DNIC」に変換していることを、マウス・細胞・細菌・ヒトサンプルを用いた実験で明らかにしました。

 

無菌マウスではDNICがまったく作られなかったことから、この変換には腸内細菌が欠かせないことが示されています。

 

血圧・血糖・肝脂肪への関連は主にマウスの実験で見られたものであり、研究者自身もヒトでの詳しい検証は今後の課題としています。

 

野菜そのものだけでなく、それを“活かす”腸内環境にも目を向けるきっかけになりそうな研究です。

 

出典

Karolinska Institutet「Gut bacteria convert dietary nitrate and iron into protective molecules」(2026年8月)

Cell「Gut microbiota generate dinitrosyl iron complexes with cardiometabolic benefits」(2026年8月19日、DOI: 10.1016/j.cell.2026.07.055)

ScienceDaily「Gut bacteria may unlock a hidden benefit of vegetables」(2026年8月22日)

※内容は2026年8月時点の公開情報に基づきます

※効果には個人差があります
※本記事は情報提供を目的としており、医師の助言や治療に代わるものではありません。

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