月1回以上「森林を歩く」人は、幸福感・生きがい・日常生活の楽しさが高い傾向:日本人約3,500人の研究から

3分でわかる!この記事の要点

結論

月1回以上森林を訪れる人は、ほとんど訪れない人より幸福感・生きがい・日常生活の楽しさを感じやすい傾向が、日本人約3,500人のデータで示されました。

理由

日本の大規模コホート調査で、森林訪問の頻度が高いグループほど、複数の心理的指標で高い値を示したためです。

アクション

月1回程度を目安に、近くの公園や森など自然の中を歩く時間を生活に取り入れてみましょう。

「森を歩く頻度」と幸福感の関係を、約3,500人のデータで調べた研究

「自然の中を歩くと気分がいい」というのは、多くの人が実感として持っている感覚ではないでしょうか。

この感覚を、日本の大規模な健康調査データで確かめた研究が、国際学術誌『International Journal of Environmental Research and Public Health』に発表されました(2026年8月4日付、第23巻8号、論文番号1020)。

研究を行ったのは、森林総合研究所・筑波大学の森田恵美氏、愛知医科大学の河合幸世氏、名古屋大学の若井建志氏らのグループです。

日本の複数施設が共同で行っている大規模コホート研究「J-MICC Study(日本多施設共同コーホート研究)」のうち、愛知県で実施されている「大幸研究」に参加した3,472名(平均年齢58.7歳、うち女性2,518名)のデータを分析しました。

これまで分かっていたこと:「1回浴びる森林浴」の効果

森林浴は1980年代に日本で生まれた言葉で、近年は海外にも広がっています。これまで、森林浴や森林ウォーキング、宿泊を伴う森林療法プログラムの効果を調べる研究は数多く行われてきました。ただし、その多くは比較的少人数を対象に、「1回だけ森を歩いた・滞在した直後」に何が起きるかを調べる研究です。

 

1回の森歩きで報告されてきた変化

  • 血圧に関する複数の研究をまとめたメタアナリシスでは、森林環境にいると、森林以外の環境にいるときより血圧が有意に下がると報告
  • 不安の軽減、ストレスホルモン(コルチゾール)の低下、森林ウォーキング後の夜の睡眠の改善
  • 免疫・炎症に関する数値の変化

多くの人が漠然と抱いている「森を歩くと気分がいい」という実感は、こうした研究の積み重ねとも重なるものだと言えそうです。

「1回の効果」と「習慣にした場合の効果」は別の話

ここで大切なのが、公衆衛生の考え方です。健康に良いとされる行動も、1回きりでは効果が長続きしないのが一般的です。1回だけ体に良い食事をとった、1回だけ運動をした、というだけでは、病気の予防や日々の健康づくりにはつながりにくいと考えられています。

そのため、「森林浴を習慣にしている人は、そうでない人と比べて健康状態にどんな違いがあるか」を調べるには、1回だけの介入実験ではなく、多くの人を対象にした疫学研究が必要になります。

ただ、これまでのところ、森林を訪れる「頻度」と健康との関連を調べた疫学研究はまだ多くありません。数少ない先行研究では、森林を訪れる頻度が高い女性ほど不眠症状が少ない傾向、高いストレス対処能力を持つ人が多い傾向が報告されています。

 

指標によって結果が分かれる点に注意

一方で、1回の森林浴では血圧が下がるという結果があるにもかかわらず、森林を訪れる頻度と高血圧の有病率との間には関連が見られなかったとする疫学研究が複数報告されています。1回浴びるだけで起きる変化と、習慣として続けた場合に見える変化は、分けて考える必要があるということです。

今回の研究は、こうした背景をふまえ、「森林を訪れる頻度」と、これまであまり調べられてこなかった幸福感・生きがい・日常生活の楽しさとの関連を、大規模な疫学データで確かめようとしたものです。

何を、どうやって調べたのか

研究チームは、参加者に「森林をどのくらいの頻度で訪れているか」を尋ね、「月1回以上」訪れるグループと、「ほとんど訪れない」グループとの間で、次の4つの心理的な指標に差があるかどうかを、年齢や性別など他の要因の影響を統計的に調整したうえで比較しました。

 

幸福を感じる頻度

 

幸福度

 

生きがい

 

日常生活の楽しさ

 

4指標すべてで「月1回以上」群が高い傾向

その結果、幸福を感じる頻度、幸福度、生きがい、日常生活の楽しさのいずれも、月1回以上森林を訪れる人のほうが高い傾向が見られました。調整オッズ比(aOR)は次のとおりです。

幸福を感じる頻度:aOR 1.72(95%信頼区間 1.29〜2.28)

幸福度:aOR 1.54(同 1.14〜2.09)

生きがい:aOR 1.65(同 1.25〜2.20)

日常生活の楽しさ:aOR 2.38(同 1.60〜3.35)

特に「日常生活の楽しさ」で最も差が大きく出ています。

この研究は、日本学術振興会の科学研究費助成事業(科研費)や文部科学省の助成を受けて行われており、著者らは利益相反がないことを宣言しています。

この結果をどう受け止めればいいか

ただし、この研究は「横断研究」、つまりある一時点のデータをもとに関連を調べたものです。

そのため「森を歩いたから幸福感が上がった」と証明されたわけではなく、「森をよく歩く人ほど、幸福感などが高い傾向にあった」という段階の結果である点は押さえておきたいところです。

また、森林歩行の頻度は、女性の不眠症状とは関連が見られた一方、血圧・高血圧とは関連が見られていません。同じ「森林を訪れる頻度」というテーマでも、指標によって見える結果は異なります。

今日から実践できる工夫(提案)

以下は、今回の研究で直接検証された治療法や介入ではなく、研究結果をふまえた一般的な提案です。

①

月1回程度を一つの目安にする

今回の研究では「月1回が最適」と示されたわけではありませんが、まずは月1回程度を一つの目安に、近所の公園や緑地、森林など自然の中を歩く時間をつくってみる。

②

予定として先に組み込む

特別な「森林浴」を意識しなくても、まずは自然の多い場所への外出を生活の予定に組み込んでみる。

③

森林だけに頼らない

幸福感や生きがいは森林だけで決まるものではないため、人との交流や趣味の時間なども合わせて大切にする。

まとめ

 

森林浴の効果については、これまでも1回森を歩いた直後の血圧低下や不安軽減などが数多く報告されてきましたが、「頻度」と日々の健康との関連を調べた研究はまだ多くありませんでした。

 

今回、森林総合研究所・筑波大学などの研究チームが、日本人約3,500人を対象にした「J-MICC大幸研究」のデータを分析した結果、月1回以上森林を訪れる人は、幸福を感じる頻度・幸福度・生きがい・日常生活の楽しさのいずれにおいても、ほとんど訪れない人より高い傾向が見られました。

 

ただしこれは横断研究で見られた関連であり、因果関係を示すものではありません。同じ大幸研究の不眠症状との関連(女性のみ)、血圧・高血圧との関連なしという結果もあわせて報告されており、指標によって研究結果にはばらつきがあります。

まずは月1回、近くの緑の中を歩く時間をつくるところから始めてみませんか?

 

出典・参考文献

Morita E, Kawai S, Sasakabe T, et al.「Associations of Happiness, Ikigai, and Enjoyment of Daily Life with Frequency of Forest Walking in a Japanese General Population: The Japan Multi-Institutional Collaborative Cohort Daiko Study」Int J Environ Res Public Health. 2026;23(8):1020.

Morita E, Kadotani H, Yamada N, et al.「The Inverse Association between the Frequency of Forest Walking (Shinrin-yoku) and the Prevalence of Insomnia Symptoms in the General Japanese Population」Int J Environ Res Public Health. 2024;21(3):350.

Morita E, et al.「No association between the frequency of forest walking and blood pressure levels or the prevalence of hypertension in a cross-sectional study of a Japanese population」Environ Health Prev Med. 2011;16:299-306.

Kadomatsu Y, et al.「Frequency of forest walking is not associated with prevalence of hypertension based on cross-sectional studies of a general Japanese population: a reconfirmation by the J-MICC Daiko Study」Nagoya J Med Sci. 2019;81:489-500.

※内容は2026年9月時点の公開情報に基づきます

※本記事は情報提供を目的としており、医師の助言や治療に代わるものではありません。

この記事をシェアする

記事一覧へ戻る

関連記事 Relation Entry