
3分でわかる!この記事の要点
結論
1日6.4〜7.8時間程度の睡眠をとっていた人では、脳や心臓など多くの臓器の「生物学的な老化」が比較的緩やかな傾向が見られました。
理由
睡眠時間と生物学的老化の間にはU字型の関連があり、短すぎても長すぎても老化が速い傾向が見られました。6時間未満の短い睡眠でも、8時間を超える長い睡眠でも、老化が速い傾向が確認されました。
注意点
これは約50万人のデータを分析した観察研究であり、「6.4〜7.8時間眠れば老化を防げる」と証明したものではありません。因果関係を完全に排除したわけではありません。
アクション
睡眠時間だけにとらわれず、極端な睡眠不足や長時間睡眠を避け、規則的な睡眠習慣を意識してみましょう。
「何時間眠ればいいのか」に、大規模データが示した一つの目安
「毎日、何時間眠るのがちょうどいいのか」は、多くの人が気になるテーマではないでしょうか。
米コロンビア大学アービング医療センターの研究チームが、英国の大規模データベース「UK Biobank」に参加した約50万人分のデータを分析した結果を、科学誌『Nature』に発表しました。
研究では、1日の睡眠時間と、脳や心臓、肺、免疫系などの「生物学的な老化」の速さとの関連を調べています。
その結果、睡眠時間が6.4〜7.8時間程度だった人では、生物学的な老化が比較的緩やかな傾向が見られました。一方、6時間未満の短い睡眠でも、8時間を超える長い睡眠でも、老化が速い傾向が確認されました。
つまり、睡眠時間と老化の関係は単純に「長く眠るほど良い」というものではなく、
短すぎても長すぎてもリスクが高くなる
U字型のパターンを示していたのです。
何を、どうやって調べたのか
研究の対象は、UK Biobankに参加した37〜84歳の約50万人です。研究チームは、脳・心臓・肺・免疫系などを含む17の臓器システムについて、MRIなどの画像から得られる構造データ、臓器ごとに特徴的なタンパク質、血液中の分子(代謝物など)といった複数の種類のデータを機械学習で解析し、23種類の「生物学的老化時計」を作成しました。
この老化時計は、実際の年齢に対して各臓器がどれくらい速く(あるいは遅く)老化しているように見えるかを、データから推定するものです。研究チームは、参加者が自己申告した1日あたりの睡眠時間と、この老化時計が示す「老化の速さ」との関連を調べました。
見えてきたのは、睡眠時間と老化の速さがきれいな一直線の関係になるのではなく、U字型のパターンを描くということでした。1日6.4〜7.8時間程度の睡眠をとっていた人では、老化時計が示す老化の速さが最も緩やかでした。一方、6時間未満の短い睡眠でも、8時間を超える長い睡眠でも、老化が速い傾向が見られました。
短い睡眠と関連する健康リスク
短い睡眠は、うつ症状、不安、肥満、2型糖尿病、高血圧、虚血性心疾患、不整脈といった病気との関連が見られました。また、短い睡眠と長い睡眠の両方に共通して、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、喘息、胃炎、逆流性食道炎との関連も見られています。
研究者のコメント
研究を率いたコロンビア大学のジュンハオ・ウェン氏(放射線科准教授)は、「睡眠は、脳と体全体にわたるほぼすべての臓器の老化の速さと関連していた」とコメントしています。
ここで大切な注意点:観察研究の限界
【因果関係に関する注意】
この研究は、睡眠時間と老化時計の値との「関連」を調べた観察研究だという点です。研究チームは、メンデルランダム化という手法を使って因果関係の手がかりも探っていますが、逆の因果関係――たとえば、すでに体調を崩していることや睡眠の質が低いことが、結果として睡眠時間の長さ・短さに表れている可能性――を完全に排除できたわけではありません。
ウェン氏自身も、「睡眠時間は本人の申告に基づくものであり、特に長時間の睡眠は、すでにある病気や睡眠の質の低下を反映しているだけかもしれない」と述べています。
つまり、「6.4〜7.8時間眠れば老化を防げる」と単純に言い切れるものではなく、あくまで睡眠時間と体の老化の状態との間に関連が見られた、という段階の研究結果です。
今日から実践できる工夫(提案)
以下は、今回の研究で直接効果が検証された治療法や介入ではなく、研究結果をふまえた一般的な提案です。何時間眠れば老化を防げるかを示したものではない点にご注意ください。
極端に短い睡眠、極端に長い睡眠のどちらも避けることを意識してみる
今回の研究では、おおむね7時間前後が一つの目安として示されています。ただし、これは平均的な傾向であり、個人の生活リズムや年齢、体調によって適切な睡眠時間は異なる可能性があります。自身の体調を見ながら、6時間未満や8時間を超える極端な睡眠パターンが続いていないか確認してみましょう。
毎日できるだけ同じくらいの時刻に寝起きする
睡眠のリズムを整える生活習慣を意識してみましょう。体内時計(サーカディアンリズム)が安定することで、睡眠の質も向上しやすくなります。休日に寝過ごしたり、寝不足を平日に補おうとするのではなく、毎日同じ時間帯に就寝・起床することを目指しましょう。
日中の強い眠気や、必要以上に長く眠る状態が続く場合は医師に相談する
日中の強い眠気や、必要以上に長く眠ってしまう状態が続く場合は、体調不良や睡眠の質の低下のサインである可能性もあります。無理をせず、気になる場合はかかりつけ医に相談するのがよいでしょう。睡眠時無呼吸症候群やうつ病などの可能性も考えられます。
短い睡眠との関連が見られた項目を日頃から確認しておく
睡眠時間だけでなく、うつ症状、不安、肥満、高血圧、糖尿病など、短い睡眠との関連が見られた項目についても、日頃から健診などで確認しておくことが大切です。これらの項目は互いに関連し合いながら、総合的な健康状態に影響を与えています。
まとめ
米コロンビア大学の研究チームが、UK Biobankの約50万人分のデータを分析した結果、1日6.4〜7.8時間の睡眠をとっていた人ほど、脳や心臓など多くの臓器の生物学的な老化が緩やかである傾向が見られました。
短すぎる睡眠、長すぎる睡眠のどちらも、老化が速い傾向と関連していました。睡眠時間と老化の関係はU字型のパターンを描くことが示されています。
ただし、これは観察研究で見られた関連であり、睡眠時間そのものが老化の直接の原因だと確定したものではありません。それでも、睡眠時間を見直すことは、今日から始められる生活習慣の一つの目安になりそうです。
出典・参考文献
ScienceDaily「Too much or too little sleep may make your body age faster」(2026年8月23日)
Columbia University Irving Medical Center「Too Little Sleep—and Too Much—Associated with Faster Aging」
Nature「Sleep chart of biological aging clocks in middle and late life」(DOI: 10.1038/s41586-026-10524-5)
EurekAlert!「Too little sleep—and too much—associated with faster aging」
※効果には個人差があります
※本記事は情報提供を目的としており、医師の助言や治療に代わるものではありません。
