
3分でわかる!この記事の要点
結論
「DASH食」は臨床試験で血圧を下げる効果が確認された食事法です。血圧を下げる薬に近い水準の効果が報告されています。
理由
野菜・果物・低脂肪乳製品を増やし、塩分を大きく減らす設計になっているため。カリウム・マグネシウム・カルシウムといった血管をリラックスさせる栄養素が自然に増えます。
アクション
野菜・全粒穀物・低脂肪乳製品を中心に、塩分は1日2,300mg以下を目安にしましょう。まずは食事に野菜をもう一品増やすことから始めてみましょう。
「DASH食」とは? ハーバードの健康情報メディアが解説
ハーバード大学医学大学院と連携する健康情報メディア「Harvard Health Publishing」が、DASH食について解説する記事を公開しています。
DASHとは「Dietary Approaches to Stop Hypertension(高血圧を止めるための食事アプローチ)」の略で、1990年代初頭に科学者によって開発された食事法です。芸能人などが考案した流行のダイエット法ではなく、科学的な研究にもとづいて生まれたという点が特徴です。
もともとは高血圧のある人の健康改善を目的に設計されましたが、記事によれば、数十年にわたる研究の蓄積から、2型糖尿病、大腸がん、認知機能低下のリスク低下といった、血圧以外の健康上の利点との関連も示唆されています。
ここから、DASH食がなぜ血圧に働きかけるのか、そして具体的に何をどれくらい食べればよいのかを、わかりやすく解説していきます。
血圧が下がる仕組み――「増やす食品」と「減らす食品」で整理する
DASH食の考え方は、大きく「増やす食品」と「減らす食品」で整理できます。
増やす
- 野菜・果物
- 全粒穀物
- 豆・ナッツ・種子
- 低脂肪乳製品
減らす
- ナトリウム(塩分)
- 加工食品
- 飽和脂肪の多い食品
- 甘い飲料・お菓子
- アルコール
野菜や果物、豆類、低脂肪乳製品を増やすことで、カリウム・マグネシウム・カルシウムといった栄養素の摂取量が自然に増えることも、DASH食の特徴です。カリウムやマグネシウムは血管をリラックスさせる方向に、カルシウムは血管の健康維持に関わるとされています。
塩分の目安
ナトリウムについては、標準的なDASH食では1日2,300mg(食塩相当量で約5.8g)までに抑え、より厳格な低ナトリウム版では1日1,500mg(食塩相当量で約3.8g)を目安とします。
アメリカ人の平均的なナトリウム摂取量は1日3,300mg程度とされており、それと比べても大きな削減です。一方、日本では、厚生労働省の「令和6年国民健康・栄養調査」によると、食塩摂取量は1日平均9.6g。ナトリウムに換算すると約3,770mgに相当し、アメリカと同様、DASH食で目標とされる摂取量を大きく上回っています。
日本では「健康日本21(第三次)」で、食塩摂取量を1日7gまで減らすことが目標とされています。
アルコールの目安
アルコールについては、目安として男性は1日2杯まで、女性は1日1杯までとされています。
これらを組み合わせた食事法について、臨床試験では血圧を下げる効果が、血圧を下げる薬に近い水準だったとの報告があります。これはDASH食のもととなった研究(DASH試験)を含む臨床試験にもとづく報告であり、記事ではあわせて、心疾患・脳卒中・心不全のリスク低減、2型糖尿病のリスク低減、大腸がんリスク低減、認知機能低下の予防、体重管理のしやすさとの関連にも触れられています。
ただし、これらのうち血圧以外の項目については「関連が示唆されている」という段階の紹介であり、DASH食を行えば必ずこれらの病気を防げる、という意味ではない点には注意が必要です。
今日から実践できる具体的な対策
ハーバードの記事で紹介されている、DASH食を日常に取り入れるための具体的な目安と実践例を紹介します。2,000kcal相当の食事を基準とした場合、1日あたりの目安は次のとおりです。
| 食品グループ | 目安の頻度 | 1食分の目安量 |
|---|---|---|
| 穀類(主に全粒穀物) | 1日6〜8回 | 食パン1枚、乾燥シリアル28g、調理済み穀物またはパスタ1/2カップ |
| 野菜 | 1日4〜5回 | 生の葉野菜1カップ、調理済みの野菜1/2カップ |
| 果物 | 1日4〜5回 | 中サイズの果物1個、または生・冷凍・缶詰の果物1/2カップ |
| 低脂肪または無脂肪の乳製品 | 1日2〜3回 | 牛乳またはヨーグルト1カップ、チーズ42g |
| 肉類・鶏肉・魚介類・卵・豆腐 | 1日2回 | 調理済みの赤身肉・鶏肉・魚85g、卵1個、豆腐113g |
| 油脂 | 1日2〜3回 | 植物油小さじ1、マヨネーズ大さじ1 |
| ナッツ・種子・豆類 | 週4〜5回 | ナッツ42g、種子またはナッツバター大さじ2、調理済み豆類1/2カップ |
| お菓子と添加糖 | 週5回以下 | 砂糖・シロップ・蜂蜜大さじ1、シャーベット1/2カップ |
※上記は2,000kcalを基準とした目安です。個人の年齢・性別・身体活動レベルに応じて調整が必要です。
避けたい食品
避けたい食品としては、以下が挙げられています。
- 調理済み食品やファストフード
- 塩辛いスナック
- 赤身肉・加工肉
- バターやココナッツ・パーム油
- 焼き菓子
- 砂糖入り飲料
具体的な食事の工夫としては、次のような例が紹介されています(いずれもハーバードの記事で紹介されている実践アイデアです)。
朝食
- スムージーやオートミールにほうれん草やベリーを加える
- スクランブルエッグに刻んだ野菜の残り物を混ぜる
- 全粒粉トーストにアボカドと卵、低ナトリウムのサルサをのせる
昼食
- 缶詰の豆や塩無添加ツナ、サラダグリーンをオリーブオイルと酢で和える
- サンドイッチやラップに塩辛い調味料の代わりにレタスやトマトなど野菜をたっぷり挟む
- 低ナトリウムの野菜スープに缶詰の豆や残り野菜を加える
夕食
- 魚や鶏胸肉、豆などの脂肪の少ないタンパク質を刻んだ野菜とオリーブオイルであえてシートパンでロースト
- 冷凍野菜を低ナトリウムのマリナラソースと合わせ全粒粉パスタに
- ズッキーニやニンジンをすりおろしてターキーバーガーやミートボールに混ぜる
間食
- 塩無添加のコテージチーズに刻んだ野菜を添える
- 塩無添加ポップコーンに栄養酵母やガーリックパウダーを少量まぶす
- セロリスティックにナッツバターを詰める
買い物のヒント
買い物の際は、以下を中心にそろえるとよいとされています。
- ほうれん草やケール、ブロッコリー、ベリー類などの野菜・果物
- 全粒穀物のパンやシリアル・玄米・キノア
- 皮なし鶏肉や魚
- 塩無添加の缶詰豆やナッツ類
- 低脂肪の乳製品
- 低ナトリウムの調味料やブロス
記事で紹介されている食品の中には、日本ではあまりなじみがなく手に入りにくいものも含まれています。たとえば全粒粉クリスプブレッドは全粒粉クラッカーやライ麦パンで、栄養酵母(ニュートリショナルイースト)はすりおろしチーズやだしの粉末で、低ナトリウムのマリナラソースは無塩のトマト缶にハーブを加えたもので代用できます。ターキー(七面鳥)のひき肉は、日本では鶏ひき肉で置き換えて問題ありません。
まとめ
DASH食は、もともと高血圧対策として科学的に開発された食事法で、臨床試験では血圧を下げる薬に近い水準の効果が報告されています。
野菜・果物・全粒穀物・低脂肪乳製品を増やし、塩分や加工食品を控えるというシンプルな考え方にもとづいており、特別な食材を使わなくても取り入れやすい点が特徴です。
まずは塩分を意識することと、食事に野菜をもう一品増やすことから始めてみるのもよさそうです。無理のない範囲で、日々の食事を少しずつ置き換えていくことが大切です。
出典・参考文献
Harvard Health Publishing「What to eat on the DASH diet」(2026年8月20日更新)
Harvard Health Publishing「A guide to the DASH diet」(2026年6月24日公開)
※内容は2026年8月時点の公開情報に基づきます
