
3分でわかる!この記事の要点
- 結論
- 音楽を聴きながら運動すると、気分が前向きになり、きつさの感じ方もやわらいでいました
- 理由
- 139の研究をまとめた結果、気分への効果がいちばん大きく、パフォーマンスも少し上がっていました
- アクション
- 運動の後半に、テンポの速い好きな曲をとっておく「音楽の使い方」を試してみましょう
目次[閉じる]
イヤホンをすると、なぜか走れる?
ウォーキングやジョギング、ジムでの運動。気づけばイヤホンをして、好きな曲を流している人も多いのではないでしょうか。「音楽があると、なんだか体が軽い」。そう感じたことがある人もいるはずです。
その感覚は、気のせいではないのかもしれません。オーストラリアの南クイーンズランド大学と英国のブルネル大学ロンドンの研究チームが、運動と音楽に関するたくさんの研究をまとめ、音楽が運動にもたらす効果を数字で示しました。研究は米国心理学会の学術誌『Psychological Bulletin』に発表されています(2019年12月オンライン公開、2020年号)。
どんな研究?
139の研究、3,599人分をまとめた
研究チームは、運動やスポーツの場面で音楽を聴いたときの効果を調べた139の研究を集め、まとめて分析しました。参加者は合計3,599人。こうした方法は「メタ分析」と呼ばれ、1つの研究だけではわからない全体の傾向を見るのに向いています。
- 集めた研究
- 運動やスポーツの場面で音楽の効果を調べた139の研究(参加者は計3,599人)
- 調べた効果
- 気持ちの変化(気分が前向きになるか)/体の反応(心拍数、酸素の使い方など)/きつさの感じ方/パフォーマンス(どれだけ動けたか)
わかったこと①:いちばん大きかったのは「気分」
音楽を聴きながら運動すると、次のようなよい効果が見られました。
| 効果 | 大きさ |
|---|---|
| 気分が前向きになる | 4つの中でいちばん大きな効果(研究チームは「中くらい」の大きさと説明) |
| パフォーマンスが上がる | 小さいけれど、はっきりした効果 |
| きつさの感じ方がやわらぐ | 小さいけれど、はっきりした効果 |
| 体が酸素を使う効率が少しよくなる | 小さな効果 |
一方で、心拍数には目立った違いは見られませんでした。体にかかっている負担は同じくらいでも、気持ちは前向きで、きつさは少し軽く感じられる。音楽には、そんな運動の「感じ方」を変える力があるようです。
研究チームは、とくに運動を始めたばかりの人にとって、楽しさや気分のよさを高めるために音楽を使うことを勧めています。運動は「楽しい」と感じられるほど続けやすい、という考え方です。
わかったこと②:テンポの速い曲で、パフォーマンスへの効果が大きく
パフォーマンスへの効果は、条件によって違いがありました。
- テンポ:ゆっくり〜中くらいの曲より、テンポの速い曲で効果が大きかった(大学の紹介では、1分間に120拍を超える曲が目安)
- 場面:競技スポーツより、ふだんの運動(ウォーキング、ジョギング、自転車こぎ、筋トレなど)で効果が大きかった
私たちのふだんの運動こそ、音楽の力を借りやすい場面だということです。
選曲に、悩みすぎなくていい
意外だったのは、自分で選んだ曲と、研究者が選んだ曲とで、はっきりした差が見られなかったことです。「完璧な運動用の曲」を探して悩むより、まずは手元の曲で始めてみるので十分かもしれません。
また、曲のリズムに合わせて体を動かした研究では、パフォーマンスへの効果がやや大きめでしたが、BGMとして流すだけの場合と比べてはっきりした差とまでは言えませんでした。
研究チームのおすすめ:いちばん好きな曲は「後半」に
研究チームは、結果をもとに、音楽の上手な使い方もいくつか挙げています。そのひとつが、運動の後半(後ろの半分〜3分の1)に音楽を使うことです。
人は、ある体験を振り返るとき、いちばん盛り上がった瞬間と最後の印象で全体を判断しやすいと言われています。運動の終わりが楽しい記憶になれば、「また運動しよう」と思いやすくなる、という考え方です。
さらに研究チームは、音楽に合わせて誰かと一緒に運動することで、仲間との一体感を味わえることも勧めています。
今日から実践できること:Zeverisからの提案
- 1. 運動の後半に「とっておきの1曲」を
- いちばん気分が上がる曲は、運動の後半やラストに流しましょう。きついところを前向きに乗り切れて、終わったあとの「楽しかった」が残りやすくなります。
- 2. テンポの速い曲を選ぶ
- パフォーマンスへの効果は、テンポの速い曲で大きくなっていました。歩く・走る・筋トレには、ノリのいいアップテンポな曲を集めた「運動用プレイリスト」がおすすめです。
- 3. 始めたばかりの時期こそ、音楽を味方に
- 運動を始めたばかりで「きつい」「つまらない」と感じやすい時期こそ、音楽で楽しさを足してみましょう。
- 4. リズムに合わせて動いてみる
- ウォーキングなら曲のビートに歩幅を合わせるなど、リズムに乗って動くのもひとつの楽しみ方です。
- 5. 誰かと一緒に、音楽で体を動かす
- ダンスやグループのエクササイズなど、音楽に合わせてみんなで動く時間は、体を動かす楽しさを分かち合えるひとときになります。
- 6. 外では音量に気をつけて
- 屋外でイヤホンを使うときは、車や自転車の音が聞こえる音量にしましょう。
まとめ
139の研究、3,599人分をまとめた研究で、運動中に音楽を聴くと、気分が前向きになり、きつさの感じ方がやわらぎ、パフォーマンスも少し上がることがわかりました。いちばん大きかったのは気分への効果で、パフォーマンスへの効果は、テンポの速い曲やふだんの運動の場面で大きくなっていました。
運動を「がんばるもの」から「楽しいもの」へ。いつもの運動に、今日はお気に入りの1曲を足してみませんか。
※本記事は情報提供を目的としており、医師の助言や治療に代わるものではありません。
あわせて読みたい
寝る前の音楽で、眠りの質がよくなった―研究のまとめでわかった「曲の選び方」と「聴く時間」
眠りに悩む大人1,007人・13の試験をまとめたコクラン・レビューで、寝る前の音楽が眠りの質をよくすることが示されています。眠りに向く曲(1分間に60〜80拍、歌詞のない曲)と、避けたい要素、聴く時間の目安を紹介します。
zeveris出典
- Terry PC, Karageorghis CI, Curran ML, Martin OV, Parsons-Smith RL. “Effects of music in exercise and sport: A meta-analytic review.” Psychological Bulletin. 2020;146(2):91–117. DOI: 10.1037/bul0000216
https://doi.org/10.1037/bul0000216 - PubMed
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31804098/
