勤務スケジュールの「予測しやすさ」が幸福度を左右する ― 米国調査、その影響は世帯所得の最大2倍 X Instagram Threads Facebook

勤務スケジュールの「予測しやすさ」が幸福度を左右する ― 米国調査、その影響は世帯所得の最大2倍  X  Instagram  Threads  Facebook

3分でわかる!この記事の要点

結論

勤務時刻が直前まで決まらない働き方は、規則的な働き方より生活全体の幸福度を下げる

理由

予測できない」こと自体が負担になり、その影響度は世帯所得の影響の最大約2倍に達した。

アクション

雇用者はシフトの早期共有を、就労者は「変動」より「事前に分かるか」を確認しよう。

シフトが「いつ決まるか」で幸福度は変わるのか

「来週のシフト、まだ出てないんだよね」――アルバイトや交代勤務の職場では、よくある会話かもしれません。

こうした“直前までシフトがわからない”働き方が、働く人の幸福度にどう影響するのかを調べた研究が、学術誌「Social Indicators Research」に2026年5月に掲載されました。

米ペンシルベニア州立大学などに所属する研究者ら(Lonnie Golden氏、Rubia R. Valente氏、Adam Okulicz-Kozaryn氏、Ebshoy Mikhaeil氏)による分析です。

研究チームは、米国の社会調査「General Social Survey(GSS)」の2016年データ(国際社会調査プログラムの「仕事に関する意識」調査を含む)を用いて、フルタイム・パートタイムで働く人を対象に、勤務スケジュールの“予測しやすさ”や”安定性”と、生活満足度(幸福度)との関係を統計的に分析しました。

 

分析対象について

自営業者や軍人は、働き方を自分でコントロールしやすい/特殊な立場のため、分析対象から除かれています。

 

「ジャスト・イン・タイム型」勤務管理の実態

こうした働き方が生まれる背景には、需要の変動に合わせて直前にシフトを組む「ジャスト・イン・タイム型」の勤務管理があります。

忙しい時間帯だけ人員を厚くし、閑散時間帯の人件費を抑えられる一方、そのしわ寄せは働く側の“予定の読めなさ”として表れます。

論文が引用する先行研究によれば、米国では不規則・オンコール型のシフトで働く人が労働力全体の17〜24%程度にのぼる一方、自分の裁量で勤務スケジュールを完全に決められる人はわずか6%程度、勤務時間まで自由に決められる人は4%程度にとどまるとされています。

「変動」より「わからないこと」が幸福度を下げる

研究では、勤務スケジュールの不確実性を5つの角度から測定しています。大きく分けると、①1カ月の中で働く時間がどれだけ増減したか(時間数の変動)、②シフトが何日前に決まるか(予定の把握しやすさ)、③シフトの形が「規則的」「不規則」「直前決定」のどれに当たるか、の3系統です。

年齢・性別・学歴・健康状態・世帯所得・職種・地域など、幸福度に影響しうる要因は統計的に調整した上で比較されています。

主な結果

1

勤務時間の変動 ≒ 世帯所得と同程度の影響

1カ月のうちで「もっとも長く働いた週」が普段より大きく上回っているなど、勤務時間の変動が大きい人ほど幸福度が低く、その影響の大きさは世帯所得の影響とほぼ同程度でした。

2

「直前決定シフト」の影響は世帯所得の約2倍

シフトが「まったく変わらない」人がもっとも幸福度が高く、シフトが数日〜1週間前にしかわからない人は、規則的な人より明確に幸福度が低いという結果でした。

この差の大きさは
世帯所得と幸福度の関連の約2倍

3

「変動すること」自体は影響が小さかった

一方、「勤務時刻が定期的に変わる(不規則ではあるが、あらかじめ決まっている)」だけの人では、幸福度の差ははっきり確認されませんでした。つまり、シフトが変動すること自体よりも、「直前まで分からないこと」が幸福感を損なう鍵だとみられます。

 

直感に反する結果も

なお、「1日以内の通知」よりも「2日〜1週間前の通知」のほうが幸福度への影響が大きいという、直感に反する結果も見られました。研究チームはこの点について明確な説明ができておらず、「予測不可能性が最も高いはずの層で影響が小さい理由」は今後の研究課題としています。

 

研究の限界・注意点

  • 研究チームは、「勤務時刻が直前に決まる」ことの影響の大きさについて、所得の変数を含めたことによる統計上の“効果の重複(オーバーコントロール)”の可能性もあり、結果は慎重に解釈すべきだと注記しています。
  • このデータは一時点の調査(横断データ)であり、「幸福度が低いから不規則な仕事に就いた」という逆の因果関係を完全には排除できません。
  • 分析対象は数百人規模とされ、業種別・年代別などの詳細な分析までは行えていません。
  • この研究は米国の労働市場を対象にしたものであり、雇用慣行や社会保障制度が異なる日本にそのまま当てはまるとは限りません。とはいえ、シフト制勤務やアルバイトが広く普及している点は共通しており、「予定がいつ分かるか」という視点は、日本の職場でも参考になりそうです。

今日から実践できる具体的な対策(提案)

以下は、今回の研究で直接検証された対策ではなく、研究結果を踏まえた提案です。取り入れやすいものから試してみてください。

 

シフトが分かった時点でカレンダーに反映する

紙やアプリで、判明しているシフトを“見える化”しておくと、予定が立てにくいという不安そのものを減らせる場合があります。

 

シフト共有アプリやグループ連絡の仕組みを活用する

職場でシフト管理アプリやチャットツールが使えるなら、直前変更の連絡が早く届く体制を整えておくと安心材料になります。

 

管理職・雇用主側は、シフト確定を早める工夫を検討する

研究チームは、勤務予定の早期確定・共有が、大きなコストをかけずに従業員の幸福度向上につながりうると指摘しています。

米国の一部の州・都市では、シフトの事前通知を義務づける「フェア・ワークウィーク法」のような制度も広がっています。

 

不安な場合は雇用主に相談・要望を伝える

可能であれば、シフト確定のタイミングについて職場に相談してみるのも一つの方法です。

 

職場のシフト表公開ルールを確認する

就業規則やシフト表の公開・変更に関する社内ルールを事前に確認しておくと、見通しを立てやすくなります。

まとめ

 

勤務スケジュールが「直前まで分からない」働き方は、規則的なスケジュールに比べて生活全体の幸福度を下げる傾向が、米国の社会調査データの分析から示されました。その関連の大きさは、世帯所得と幸福度の関連の最大約2倍という結果です。

 

一方で、シフトが定期的に変わること自体は、幸福度に明確な影響を与えていませんでした。この研究は一時点の調査データに基づくものであり、因果関係の証明には限界がある点にも留意が必要です。

 

とはいえ、「予定を早めに知れること」が働く人の幸福感にとって意外と大きな意味を持つ、という視点は、働き方を見直すヒントになりそうです。

本記事は情報提供を目的としており、医師の助言や治療に代わるものではありません。

 

出典

Golden, L., Valente, R. R., Okulicz-Kozaryn, A., & Mikhaeil, E. (2026). Do Unpredictable and Unstable Work Hours Reduce Subjective Wellbeing? Social Indicators Research, 183, 11.

※内容は2026年8月時点の公開情報に基づきます

 

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