「幸せ」だけじゃない――世界の専門家122人が合意した「ポジティブメンタルヘルス」19の要素

「幸せ」だけじゃない――世界の専門家122人が合意した「ポジティブメンタルヘルス」19の要素

3分でわかる!この記事の要点

結論

「ポジティブなメンタルヘルス」について、幸福感や満足感だけでなく、自己受容・自律性・他者とのつながりなど幅広い要素が確認された。

理由

世界の専門家122人が合意し、「ポジティブなメンタルヘルス」を19の要素で整理したから。

アクション

19の要素から気になるものを選び、日常生活の中で少しずつ意識するところから始めよう。

「メンタルヘルスが良い」とはどういうこと?

「メンタルヘルスが良い」と聞くと、多くの人は「悩みがない」「病気でない」状態を思い浮かべるかもしれません。

しかし、オーストラリア・アデレード大学のMatthew Iasiello博士らの国際研究チームによる研究によると、「ポジティブなメンタルヘルス(前向きな心の健康)」は、それだけでは説明しきれない、もっと幅広い概念であることがわかりました。

この研究では、26カ国・11分野の専門家122人が参加し、「デルファイ法」と呼ばれる、専門家の意見を段階的にすり合わせていく手法を使って、「ポジティブなメンタルヘルスとは何で構成されているのか」を初めて体系的に整理しました。

研究成果は学術誌『Nature Mental Health』に2026年4月10日付で掲載されています。

 

Iasiello博士は次のように説明しています。

「ポジティブなメンタルヘルスは幅広い概念です。単に幸せを感じることでも、不調でないことでもありません」

研究内容:専門家122人が3段階で合意した19の要素

研究チームは、心理学や医学、公衆衛生、哲学、社会学、経済学など11の分野から集まった専門家122人(平均経歴約20年)を対象に、3ラウンドにわたるデルファイ法による調査を実施しました。参加者はそれぞれの立場から「ポジティブなメンタルヘルスを構成する要素」について意見を出し合い、75%以上の専門家が「これは重要な要素だ」と合意した項目だけが、最終的な一覧に残されました。

その結果、合意に達した要素は19個

そのうち特に合意度が高かった(90%以上が合意した)のは、次の6つです。

特に合意度が高かった6つの要素

 

意味と目的

人生に意味や目的を感じられること

 

生活満足度

自分の生活全体に満足していると感じられること

 

自己受容

自分自身をありのまま受け入れられること

 

他者とのつながり

人と支え合い、関わりを持てていると感じられること

 

自律性

自分の意志で物事を選び、行動できると感じられること

 

幸福感

前向きな気分や喜びを感じられること

残りの13の要素(75%以上・90%未満の合意)

 

受容

状況をありのままに受け止められること

 

達成感

物事をやり遂げたと感じられること

 

活動と機能

日常の活動にきちんと取り組めていること

 

帰属感

どこかに属している、居場所があると感じられること

 

平静さ

心が落ち着いている状態

 

有能性

自分には物事に対処する力があると感じられること

 

成長

自分が発達・成長していると感じられること

 

没頭感

物事に夢中になれること

 

楽しさ

生活の中に楽しみがあること

 

楽観性

前向きな見通しを持てること

 

自己一致

本来の自分らしくいられると感じられること

 

安心感

安全で守られていると感じられること

 

活力

心身にエネルギーがみなぎっていると感じられること

 

【研究の限界に関する注釈】

なお、この研究にはひとつ重要な限界があります。専門家パネルの構成が欧米・英語圏出身者に偏っていたため、Iasiello博士らも「非西洋的な幸福観、例えば日本語の『生きがい』のような概念が、このタキソノミー(分類体系)には十分に反映されていない可能性がある」と指摘しています。つまり今回の19要素は、あくまで「現時点での国際的な専門家合意」であり、文化によって重視される要素が異なる可能性がある、という点には留意が必要です。

今日から実践できる具体的な対策

今回の研究そのものは「何が良いメンタルヘルスを構成するか」を整理したものであり、「どうすればそれらの要素を高められるか」を直接検証したものではありません。以下は、19の要素を手がかりにした一般的な提案であり、研究で効果が証明された対策ではない点にご留意ください。

 

意味と目的を意識する

自分にとって大切なことや、日々の行動が誰かの役に立っている実感を、ノートに書き出してみる。

 

他者とのつながりを育てる

家族や友人と、短時間でも顔を合わせて話す時間を意識的に作る。

 

自律性を大切にする

一日のうち一つでも、自分で選んで決める場面を意識してつくる。

 

達成感・成長を味わう

小さな目標を立て、達成できたことをその都度振り返る

 

活力を保つ

睡眠や軽い運動など、心身のエネルギーを整える基本的な生活習慣を見直す。

 

安心できる環境を整える

安心して過ごせる場所や人間関係を、身の回りに一つでも確保する。

まとめ

 

今回の国際研究により、「ポジティブなメンタルヘルス」は幸福感や満足感だけでなく、自己受容・自律性・他者とのつながり・成長など、19の要素からなる幅広い概念であることが、世界の専門家122人の合意として整理されました。

 

一方で、この分類は欧米・英語圏に偏った専門家パネルによるものであり、非西洋的な幸福観が十分反映されていない可能性も指摘されています。

 

今回紹介した19の要素は、自分自身の心の状態を振り返るための一つの手がかりとして活用してみてください。

※本記事は情報提供を目的としており、医師の助言や治療に代わるものではありません。心身の不調を感じる場合は、医療機関や専門家にご相談ください。

 

出典・参考文献

Iasiello et al., “A Delphi consensus study on the dimensions of positive mental health,” Nature Mental Health(2026年4月10日)DOI: 10.1038/s44220-026-00617-5

PsyPost(2026年8月12日)”Scientists identify 19 core dimensions of positive mental health in new consensus study”

※内容は2026年8月時点の公開情報に基づきます

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