3分でわかる!この記事の要点
結論
自然の中で過ごす活動は、大人には総合的な幸福感を、若者には心理的な幸福感をもたらすと確認されました。
理由
自然活動で気分と生活満足度が上がると、それが運動や自然との関わりを増やす好循環につながります。
アクション
歩いて行ける身近な緑地を選び、週1回以上・1時間程度、自然と触れ合う時間をつくってみましょう。
「自然と触れ合うこと」と「幸せ」は、本当につながっているのか
スペイン・マドリード工科大学の研究チームによると、自然の中で過ごす屋外活動は、心の健康(ウェルビーイング)と、環境を大切にする行動の両方に良い影響を与える可能性があるといいます。
この研究は2026年7月、学術誌「Frontiers in Environmental Science」に掲載されました。
新型コロナウイルスの流行をきっかけに、多くの人が自然や緑のある場所の価値を見直しました。その一方で、気候変動への関心はあっても「自分ごと」として行動に移せない人も少なくありません。
この研究は、自然と触れ合う体験が、私たちの心の健康と、環境に配慮した行動との間にどのような橋渡しをしているのかを、実際のアンケート調査をもとに明らかにしようとしたものです。
調査の概要
研究チームは、自然環境・ウェルビーイング・レジャーの専門家18人の知見をもとにアンケートを設計し、2021年9月から2023年2月にかけてスペインで実施しました。
回答者数
女性
男性
対象年齢
回答は匿名・任意で行われ、参加者は自宅や職場から徒歩30分以内の場所で自然活動を行う人が57%を占めました。
自然と過ごすと、気分はどう変わるのか
この研究でもっとも注目したいのは、自然の中で過ごす活動が「気分」に与える影響です。
「気分が良い」と感じた人の割合
「気分が良い」と回答
「気分が良い」と回答
「気分が良い」と回答
活動前に「気分が良い」と答えた人は59%だったのに対し、活動中は78%、活動後は88%にまで上昇しました。
自然と触れ合う時間は、その場だけでなく、活動が終わったあとにも気分の良さが残りやすい、ということがうかがえます。
「定期的な屋外活動は、体・心・人とのつながりを含めた総合的な幸福感に影響する」と回答
「非常に満足」と回答(「かなり満足」37%と合わせて86%が満足)
ほぼ全員(99%)が、この活動を人に勧めたいとも答えています。
なぜ「好循環」が生まれるのか
研究チームは、こうした結果を一つの「好循環(virtuous loop)」として説明しています。
自然の中で過ごす活動によって気分や生活満足度が高まる
それが身体活動の量を増やし、自然ともっと関わりたいという気持ちや、自然での活動を人に勧める行動を後押し
そうした行動が増えることで、また自然と触れ合う機会が増えていく
つまり、自然と触れ合う → 気分が上がる → さらに自然と触れ合いたくなる → また気分が上がるという、幸福感と環境行動を両方後押しする循環が生まれているのです。
年齢・性格・教育による違い
年齢によって、自然から受け取る恩恵の中身は少し違うようです。
16〜24歳の若い世代
「リラックスしたい」という動機が強く、自然活動によって心理的な幸福感(気持ちが落ち着く、リフレッシュできるなど)を得やすい傾向が見られました。
35〜64歳の世代
自然との触れ合いが体・心・社会的なつながりすべてを含む総合的な幸福感に影響すると感じやすい、という違いが見られました。
年齢だけでなく、性格や教育水準といった要素も、自然をどれくらい敏感に感じ取れるか(環境感受性)に影響すると考えられています。こうした個人差が、自然との関わり方や、その先の環境配慮行動の個人差にもつながっているようです。
どんな自然の過ごし方が多かったか
活動の中身を見ると、「散歩」が64%ともっとも多く、活動場所は緑地・公園・庭が46%、山間部が28%でした。
自宅や職場から徒歩30分以内の場所で活動
「週1回」45% + 「週2回以上」41%
1時間以上の活動継続時間
公園・庭・緑道など、続けやすい場所
こうした身近さや続けやすさも、気分や満足度の高さを支える要因になっていそうです。
自然への愛着と、環境に配慮した行動
もう一つの重要なポイントが、幸福感と環境配慮行動のつながりです。
自然への情緒的な愛着が強い人ほど、環境に配慮した行動を取る傾向が強まることも、この研究で確認されています。
相関関係の強さ
「自然を大切にすることは自分自身を大切にすることだ」という考えに強く同意する人ほど、「自分の行動が自然環境に影響する」という自覚との関連が強い
「あらゆる生き物はつながっている」という感覚との関連
実際、回答者の78%が「私たちは自然の一部であり、自然も私たちの一部である」という考え方(生態系中心的な価値観)に共感していました。
まちづくりへの応用可能性
研究チームは、こうした結果が環境教育や公共空間づくりへの応用にもつながると期待を示しています。
たとえば緑地を生かした都市デザインや、自然と触れ合いやすい公共空間づくりは、人々のウェルビーイングを高めると同時に、環境に配慮した行動を後押しする一つの手段になるかもしれません。
調査の限界
統計的には、回答が「環境への意識」「自然との関わり方」「自然からの幸福感」という3つの傾向のまとまりに分けられることも確認されており、幸福感の感じ方は意識や関わり方だけでは説明しきれない部分がある、という結果も出ています。
また、この研究はある時点でのアンケート結果を分析した「横断調査」であるため、研究チーム自身も「自然と触れ合うことで幸福感が高まるのか、それとも幸福感が高い人がもともと自然を求めやすいのか、因果の向きを特定するのは難しい」と述べています。
この記事で紹介する関係性は、あくまで「関連が見られた」という段階のものであり、「自然に触れれば必ず幸せになる」と断定するものではない点にご注意ください。
今日から実践できること
この研究そのものは、特定の実践方法の効果を実験的に検証したものではなく、アンケートによる関連性を分析したものです。そのため、以下は研究結果や、論文内で紹介されている関連研究の知見をもとにした「提案」としてご覧ください。
歩いて行ける範囲の緑地を選ぶ
調査では、自宅や職場から徒歩30分以内の場所を使う人が多く、近さが「行きやすさ」や「慣れ親しみ」につながっていました。まずは近所の公園や緑道など、続けやすい場所を見つけることが第一歩になりそうです。
目安は週1回以上・1時間程度
調査対象者の多くは週1回以上、1時間を超える活動をしていました。論文が参照している英エクセター大学の研究(このアンケート調査とは別の研究)では、週2時間程度の自然との接触が健康との関連で目安として挙げられており、1回にまとめても、何回かに分けても同程度の効果が報告されているとのことです。
あくまで参考の目安として捉えてください。
誰かと一緒に出かける
調査では、他者と一緒に活動することが幸福感のグループと関連していました。家族や友人を誘ってみるのも一つの方法です。
その場では携帯電話を少し手放してみる
回答者の73%が「自然の中では携帯電話を手放すのに苦労しない」と答えていました。無理のない範囲で通知をオフにするなど、自然の時間を過ごしてみるとよいかもしれません。
静かで清潔、行きやすい環境を選ぶ
交通量が少なく、ゴミや汚染がなく、日当たりが良く、水辺があるといった条件を重視する人が多く、こうした環境ほど満足度との関連が見られました。
まとめ
515人のスペイン人住民を対象にした今回の調査から、自然の中で過ごす活動が気分や生活満足度を高め、それがさらに自然との関わりや環境配慮行動を後押しするという「好循環」の可能性が見えてきました。
ただし、これは横断的なアンケート調査に基づく関連性の分析であり、因果関係を断定するものではありません。
年齢や性格、教育などによって、自然から受け取る恩恵の形も変わってくるようです。
まずは無理のない範囲で、身近な自然に足を運ぶ時間をつくることから始めてみてはいかがでしょうか。
※効果には個人差があります
※本記事は情報提供を目的としており、医師の助言や治療に代わるものではありません。
出典
Buceta-Albillos, N., Ayuga-Téllez, E. (2026). The virtuous loop between nature and well-being: a model of pro-environmental behavior. Frontiers in Environmental Science, 14.
※内容は2026年7月時点の公開情報に基づきます
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https://zeveris-wellbeing.com/nature-time-wellbeing-virtuous-loop